僕の祖父は、不思議な人だった。彼は”アイコノクラズム”というみょうちきりんな名前の神様を崇拝していた。 「アイコノクラズムってなんなの?」 僕がそう聞くと、祖父はいつも僕をこう叱りつけた。 「こら、その名前の意味を軽々しく聞くな」 そのせいか、僕の”アイコノクラズム”への興味は段々と膨らんで行った。しかし、祖父は、僕がインターネットや辞書でそれについて調べることを強く禁じた。 「アイコノクラズムってなんなんだ?」 僕がその意味についてぐるぐると頭を巡らせている間にも、祖父の"アイコノクラズム"への信仰心は日に日にひどくなっていき、終いには親戚中に"アイコノクラズム”様の教えを布教しようとするようになった。父をはじめとする親戚一同は、これに腹を立て、彼と縁を切ってしまった。もちろん僕も祖父とはそれっきりだ。それからというもの、孤独となってしまった祖父は次第に生きる気力を失い、今から半年前に孤独死した。僕は彼の葬式の夜に、こっそり"アイコノクラズム”について調べた。その意味は”偶像破壊”。今考えると、ある言葉を偶像として崇拝した結果、自分の人生を壊してしまった祖父にとって皮肉な言葉になってしまったなと思う。
教師とは、数ある職種の中でも、理不尽を背負った職種の一つであろう。 残業と言う概念はなく、気が立っている親からのクレームを受け、時には無償で部活の遠征に同行する。 教師と言う職業を目指す人間がいなくなるのは、半ば自然出会った。 しかし、社会は教師と言う概念を求めた。 空っぽになった学校では、有志の大人たちが集まって、教師の代わりを務めた。 職員室の電話が鳴り響く。 「もしもし? 私、山田ですけど!」 「どうされました?」 「どうされましたもなにも、給食で魚が出たって言うじゃありませんか! うちの子は魚が苦手なんですから、配慮を頂かないと」 「なら自分で作れ!」 田中君の親は、容赦なく電話を切った。 再度電話が鳴り響くが、誰も出る人はいなかった。 「今日の教師止めます」 それどころか、田中君の父親は早退を申し出て、さっさと学校を後にした。 授業を行うのは、あくまでも有志。 授業に対してお金をもらっておらず、当然毎日行う義務もない。 突然帰ったところで、ペナルティもない。 その日の授業は、一日自習。 授業がなくなったことで、山田君の親は周囲からの非難を受け、次からは給食が魚の日にはお弁当を持たせるようになった。 「では、授業を始めます」 教師が滅亡し、教師の代役が一切の責任を持たない世界。 不思議なことに、クレーマーの数が減っていき、教師の働きやすさが改善されたらしい。
「高っ! 一食千円? 無理無理無理!」 俺は店の前の看板を見て、即座に進行方向を変える。 飯一食に、千円なんて到底出せない。 つーか、ぼったくり。 俺はいつもの牛丼屋に駆け込んで、いつもの牛丼並盛を注文した。 牛丼ができるまでの間、やることがなかったので、自作の売上報告メールに目を通す。 売り上げは低迷。 一冊千円と言う激安価格なのに、一考に売れない。 「千円くらい、気前よく出せよなあ。これじゃあ、次の話こねえじゃん」 テーブルに牛丼が置かれたので、俺はほかほかの飯を、怒りの勢いのままかっ食らった。
「あ。アイコン変わってる」 愛用していたメールアプリのアイコンが変わった。 デザインが似ているとはいえ、アプリがどこにあるのかわからなくなってしまった。 アプリを起動すると、中身はそのまま。 いつも通りに宛先と本文を書いて、仕事先へとメールを送る。 人生、こんなことがよくある。 使い勝手は変わらないのに、慣れ親しんだ見た目だけが変わってしまうのは、なんとも不思議な気分だ。 一説には、外国人や障碍者でもわかるような、よりユニバーサルなデザインに改善したとも言われているが。 どちらでもない私からすれば、ただただ面をくらうばかりだ。 「おはよー」 そんなことを考えていたら、旦那が起きてきた。 禿げ散らかした頭で日光を反射しながら、前に出た腹をぼりぼりと書いている。 顔と言うアイコンが、結婚時とは完全に変わってる。 「どうしたの? じっと見て。俺の顔に、何かついてる?」 「んーん。なんでもない」 年を取って変わった見た目。 これにも、何か意味があるのだろうか。 不倫ができないように、あえてアイコンを崩したとか。 旦那は台所に入ってくると、結婚前からの習慣らしいモーニングコーヒーを作り始めた。
彼は私の永い生の中に現れた唯一のひとでした。 暗い夜道に突如空に昇った星でありました。あてどなく歩く道を、もしやもう違えてしまったのではと不安に震える道中に、そこを目指せば良いのだと私を駆け出させる希望の火でありました。 実際には彼は隣にいて、いつでも私の手を引いてくれたので、旅人の星に喩えるよりは、掲げるランタンの方がいいのでしょうか。 ああ、遠すぎて温度の分からない星よりは、ランタンの方がうってつけかもしれない。彼の隣は温かかったのです。どんなに寒い冬の雪の日も、普段と変わらずに。 私は彼から多くを学びました。気遣いやら、笑わせ方やら、愛し方を。彼と同じにはできはしませんでしたが、彼のその様はたいへん、うつくしかったのです。全部、彼の言う愛によるものでありましたから、それを持たぬ私は、彼から見るこの世界はどれほど輝いているのだろうといつも不思議に思っておりました。 我々はどうやら同じものを見ることはできないのだ、と知ったのは、彼はとうに気付いていたのかもしれませんが、少なくとも私が知ってしまったのは、もう戻ることが叶わぬほど歩いた後でした。 歩き始めた地点はおろか、一度一人分が途切れた足跡の痕跡も見ることが叶わぬほど遠くまで来てからでした。 彼は変わらず私の手元にありました。この先どうしよう、と彼は決して言いませんでした。振り返る素振りすら私の見ている前ではしませんでした。 不安とともに私の手を握る掌に、ここに来てようやく、彼も私と同じくして、道を知らなかったのだと気付いたのです。 二人して道を失いましたが、私は別段悪い気はしませんでした。思えばここまで既に散々迷い、何故この彷徨い歩いた果てに、私の望む場所に、彼が連れて行ってくれるのだと疑うことなく信じていたのだろうと今更おかしくなったのです。 悪い気はしませんでしたが、悪いことをした気にはなりました。何故同じになれないのだろうと、苦しむ彼をずっと、隣で見てきたからです。彼は星でなくランタンでした。 連れ歩いたのは私です。
あと何日、ボタンを通す日がやってくるのだろう 待ちに待ってる訳じゃ無いけど 明日がまたやってくる訳で ほつれたボタンを針で結び直した前日 今日も靴を履いて、深呼吸をして、世界に挑む 今週はあと何日だろう 待ちに待った休日 締め付けられたボタンを緩めたくて ほつれた感情を抱き抱えたくて 今日は靴下を履いて、深呼吸をして、自分に挑む 来週はボタンを替えようかな 替えるなら何がいいだろう いや、どうでもいいや いつものボタンでいいや (完)
明日は月曜日。 平日だ。 また仕事に行かなくちゃならない。 ああ、嫌だ。 嫌だ。嫌だ。嫌だ。 どうして月曜日なんて来るんだ。 ずっと、日曜日のままがいい。 それを呟いたのが、一万年前。 今日も目が覚めたら日曜日。 なんど時計を見ても、時間は変わらない。 何度も泣き叫んだ。 何度も神に祈った。 何度も自殺した。 しかし、日曜日は繰り返される。 「行ってきまーす」 隣の家から出ていく高校生は、今日も元気に部活へ向かう。 それを見送る親も、どことなく楽しそうだ。 二人を殺したのは、何千年前だったか。 もう、やりたいことがない。 月曜日、来い。 月曜日、来い。 月曜日、来い。 早く、休日を終わらせてくれ。
【お狐さまはお狐さまであってほかの何者でもないということをどうやって理解してもらおうかとあれやこれや】 楽しい宴のあとは、さびしくて、せつなくて。だったらいっそのこと宴に出なければいいんじゃないかと思ってしまう。出なければ楽しい思いにもならず、そのあとの急な落ち込みにしても襲ってくることはない。でも、それはそれで、さみしくてせつなくてやるせないことだ。理解だってしてる。僕とお狐さまによるささやかな暮らしという名の宴は終わりを迎えようとしている。さびしくてせつないやるせなくて胸をえぐられる。 結局、僕は、逃げたいんだと思う。そのことから目を背けたいんだと思う。 そんなとき僕は、わざわざ深夜、こそっと部屋を飛び出して、外をひとりで歩く。さびしくてせつなくて、でも案外、人を感じられる。タクシーが走っていたりいなかったり。新聞配達のバイクが走っていたりいなかったり。アパートの一室に、明かりがついていたりいなかったり。 深夜の道ばたに落っこちている何かを、ひょいとひろい上げてみる。かつて誰かのものだったその何かを。その姿に反して大切にされていたのかもしれないその何かを。その姿のとおり、ぞんざいに扱われていたであろうその何かを。所有者にどう扱われていたのかの如何によらず、他人のものであったその何かを、容易に手にするその行為が、なんだか大それたことをしでかしてるみたいで急にドキドキしてしまったりする。 深夜の闇に、工場の建物たちが要塞のようで、それが不意にあらわれては僕を驚かせ、不覚にも僕は驚く。昼間はまったくもって、たんなる工場の建物としてそこにあるくせに。 それらのことを話せる相手がいまはいるというのに、それでもたまらなくさみしい。もはや神経反応というくらいに。 深夜の闇に拒まれたことは、これまで、あっただろうか。深夜の闇にバカにされたことは、これまで、あっただろうか。深夜の闇に吸いこまれそうになったことは、これまで、何度かあった。深夜の闇のヤツは、そうやって容易に、僕のことを誘惑してくる。いくら誘惑してきたって、応じてあげることはないというのに。それでも深夜の闇のヤツは― ・ 「引っ越すことにしたよ」 お狐さまに短く報告する。 ―うむ。致し方あるまい いつものように淡白な返答があるだけだった。 僕たちは、契りどころでは、なくなっていた。
「パパ、これなあに?」 「……どれ?」 空にヒモのような物が見えた。 でも、私しか見えていなかった。 少し引っ張ってみたら、世界が揺れた。 地震とは違う。 大きな手が地球を掴んで、ゆさゆさ揺らしたよな揺れだ。 その日、電柱がたくさん倒れたらしい。 「やばいやつだ」 私は、ヒモのようなものを決して触らないと決めた。 でも、ヒモは私の部屋の中にあるし、さらに言えばベッドの近くだ。 ごろんと寝返りを打てば、ひっかかってしまいかねない。 「部屋の模様替えしたのか」 「うん」 私は、ヒモのある場所に近づかなくていいように、家具を移動させた。 部屋の角の一つだけに、何も置かないちょっと変な見た目になったけど、仕方がない。 世界のためだ。 「早く一人暮らししたいなあ」 私は今日もベッドから、ヒモのようなものを見ている。 毎日が楽しい訳じゃない。 死にたい日もある。 そんな時、あのヒモを引っ張ってなにもかも失くしてしまいたくなってしまう。 だから、私はあのヒモから早く逃げたい。 「県外の大学に?」 「うん」 「うちにはお金が」 「バイトするから」 大学に、無事合格。 私は、大学の寮に入ることができた。 「こんにちはー! 私の新生活!」 四人一部屋、ドミトリー式の寮。 私のベッドは、入って右側の、上側のベッド。 天井には、ヒモのようなものがぶら下がっていた。 「おっと、マジか」 試しに、少しだけ引っ張ってみた。 大学の使われていない教室が爆発した。 「先輩、ベッドの位置変わってください」 「嫌よ。私、高所恐怖症なの」 このヒモは、いったい私に何をさせたいのだろうか。 私は自分の手足を紐でぐるぐる巻きにして、寝ている間にヒモのようなもの触らないようにした。 「何やってんの?」 「寝相悪いんで」 その日の夜に、夢を見た。 夢の中に出てきた王様は、世界を破壊するスイッチを持っていて、常に押さないようにと苦しんでいた。 夢の中で私と目が合って、王様はニヤッと笑った。 『お前も同じ苦しみに合え』 私は前世で、こいつに何かしたのだろうか。 それとも、単なる八つ当たりの相手に選ばれたのか。 私は思いっきり舌を出して、王様を睨みつけた。 ヒモは、今日も天井からぶらさがっている。
病院のデイケアで楽器を触る。 フレットだとか何弦だとか組み合わせて弾くと上手く音が出るらしい。 でもめんどくさがりなので練習しない。 何かに夢中になれる心を忘れてしまっているのだろうか。 単に手先が不器用なだけかもしれない。 畑の野菜をダ・ヴィンチの最後の晩餐のように机に並べて音符に見立てる、みたいなことを思い付くがそもそも音符の種類を知らない。 茄子は茄子の音、キュウリはキュウリの音、ジャガイモはジャガイモの音。 病院のベンチに座っていたアメリカ人のお爺さんとその孫達は僕にミネラルウォーターをくれた。 ゴクリと喉を鳴らして飲む音がまた何か世の中の喧騒と混ざり会い相関するような気がするようなしないような。 十字架を切って挨拶したお爺さんはオーケストラの指揮者のような身振りで優しい目をしていた。 老人は全てを信じる、という言葉を思い出す。 僕はまだ自分を信じきれない。 梅雨が始まる。 クラシックな生活をしたいがパンクラップのアーティストの音楽でも聴こうかしらとまた定型的になる。 定住して3年。 鶏の鳴き声でも聴いて病院の近くを散歩してるペットの豚の声を聴き猫のキャットファイトの鳴き声を聴いてお婆ちゃん犬のフガフガ言う声を聴き認知症のお婆ちゃんの怒号も聴く。 世の中は音で溢れているが攻撃的な都会の喧騒は僕を引きこもらせたくなる。 イヤホンを最近していない。 煙草の煙で描く楽譜は規則性がなく町の人達に怪訝な顔をされてまた忘れ去られていく。 数学の出来ない農民は水を求めて言葉を抑え込む。 本当は叫びたい。 いやあ愚痴になってしまった。 ベートーベンを羨むサリエリは(とは言っても音楽史に疎い)こんな感じなのだろうか。 何もしていないので鬱にもなりようがないのだけど馬鹿やってよう。 て言うか馬鹿なんだからアベレージ馬鹿でいいのだ。 楽士になれない農奴は土と水と風によって地球を楽譜に見立てる。 台風のあとは少し世の中が綺麗になっていればいいなと思いオシッコをして寝る。 ジョロジョロジョロジャー🎵
「食べらんないのある?」 「ヒカリモノ、ちょっと苦手」 「ああ、わかるわ」 「ダメなのあるの?」 「んん、なんだろなあ…」 考えていたら 「おじさん、たまごダメでねえ」 と、カウンターのあちらから低い声が 見てみると、ほのかな酢飯の香りの向こうから、お店のご主人がにっこりとした笑顔をしてみせる 友人と顔を見合わせる 思いは一緒のよう 「たまご、ダメなんですか?」 そろった声で聞いていた 「ダメっていうか、おじさんが小さかったころは、たまごも高価でねえ… それで…」 そうなんだあ、と呟く友人 私も、心のなかで… 「ああ、ごめんねえ、ヘンな話しちゃって」 「いえ…」 「気にせず、たくさん食べてってくださいねえ」 「ええ…」 どれもおいしいお寿司だったのだけど… なんだか、たまごは注文できなかった
どうにも僕には好きなものがない。 全てが嫌いってわけではない。 景色を眺めること、本を読むこと、そしてお料理をすること、全部全部大好きなんだ。 だけど、どんな景色が好きなのか、どんな本を好むのか、どんな料理を作るのか、をきかれると答えられない。 だってどれも魅力的なんだもん。 景色だって、太陽が沈むオレンジ色の空も雨上がりのキラキラ光ってる地面も全部素敵で大好き。 本だって、キュンキュンするラノベも少し難しい純文学もどっちも大好き。 お料理だって、味噌汁みたいな和食もパスタみたいな洋食も全部大好き。 どれも大好きで僕にとって特別なものなんてない。 全てが特別だから全てが普通になる。 だから自動的に好きなものがなくなる。全部大好きなのに。 なんだか寂しい。大好きが普通になる。僕にとって普通=好きなのに。
彼女は月明かりのように 暖かい光を浴びながら、 踊っていた。 ( どうして? ) ( あの言葉は嘘だったの? ) ( なぜ裏切ったの…? ) 彼女は踊る最中 次々あふれる感情が止まらなかった。 だがそんな彼女のことなど 見向きもせず その身にまとう白きドレスは、 踊る彼女をいっそう輝かせた。 ( どうして私が踊らなければならないの? ) 彼女は今すぐ踊るのを止め 静かに一人、 床に泣き崩れたかった。 だが彼女の足は 彼女を支えることはやめず、 涙さえも彼女を拒む。 彼女はあふれる感情を 振り払うように 手をはらう。 出ることのない涙が 落ちぬよう、 天を見上げる。 そして観客に その哀しみを見せぬよう、 下をそっと見つめる。 彼女はそれらを繰り返し、 そしてしばらくすると、 踊るのを止めた。 観客は彼女に対する拍手を しばらく止めなかった。 彼女の想いは 彼に届いていただろうか? 観客の拍手は 彼女に届いていただろうか? そして彼はまた、 動かなくなった彼女が 壊れぬようにそっと、 フタを閉じた。
57577に投稿した短歌です。 煌煌と瞼の裏に浮かぶ星 月が手招く「夢はいかが?」 「間も無く終点、夢に到着です」 月の列車で今夜もぐっすり 流星に願った「夢を見てみたい」 きっと叶わない『ぼく』は『夢』 星のアイマスクを片手に飛び乗る 『夜発↓夢着』最終列車 月をもぎ取り枕にし「おやすみ」の 合図で消灯する星団 寝る支度夢の木に成る実を一つ 食べて今宵も紡ぐおとぎ話 「はいどうぞ」夜が差し出すあみだくじ 今夜見る夢を決める為に 夜に散る星の欠片を切り取って 夢の中で空に貼り付ける 夢の中広がる空に貼り付けた 寝る前に切り取った天の川 速達で届いた鞄の中身は 昨夜の夜空泳ぐ流星 置き去りにされた春をこっそりと 鞄に忍ばせ解き放つ夏 夏だから夏色に替えるのが『普通』? 春色が好きなくせに嘘吐き 雨に濡れここぞとばかり泣いてみる 鞄だって泣きたい日もある
寝坊をして急いで駅に行く。完全に遅刻だ。 ホームはいつもと違い通勤ラッシュが過ぎて穏やかな雰囲気になっている。 自販機の前で小さな女の子と母親がどれにするか楽しそうに話している。 その近くにホームから線路を覗くスーツ姿のオジサンがいた。 私が会社に遅刻の連絡をしている間も、ずっと線路を入念に観察している。落とし物なら駅員に言えばいいのだが、まさか降りて取らないよなっなんて思うくらい真剣に探している 「落とし物ですか?」 「え、あっ、はい。そうなんですよ」 「駅員に言って取ってもらったほうがいいですよ」 「はい、そうなんですが、どこに落としたか分からなくて」 「何を落とされたんですか?イヤホンとか?鍵とか?」 オジサンは笑顔で右腕を上げながら応える 「右手です。この間轢かれたときに、右手だけ、どこかへ行ってしまって」 「ママこれなに?」 自販機の下を覗いて小さな女の子が何かを指さしている
「君の仁美に乾杯」 「なめてんのか」 親友の妻、仁美さんと不倫したのが親友にバレた。 少しでも和ませようとウィットなギャグを挟んだら、親友はこの世のものとも思えない怒りの形相を俺に向けてきた。 仁美さんは、ひたすら俯き続けている。 ぼくは大きくため息をついた。 もう、仁美さんの綺麗な瞳を見ることができないんだと。 机の上に叩きつけられた証拠写真の数々。 「で? 不倫したことは認めるんだな?」 親友からの強い言葉に、ぼくはとりあえず目の前の水を飲みほした。 ここから入れる保険ありますか?
「池袋ー。池袋。終点、池袋です。」 アナウンスと共に外の世界へ一歩踏み出す。まだ陽光が主張を続けている時間帯だというのに、ホームの床は冷気を纏っていた。 秋。床から放たれる冷気と身につけている服の袖の長さが、その季節を連想させた。 軽い足取りで目的地へ向かう。直進、左、右。焼きたてのパンやアロマショップの香りが鼻を掠める。次々と変化する匂いに心を踊らせながら、角を曲がる。すると、突如、人通りの少ない広間に放り出された。先程までのような立ち並ぶ店も無く、まるで誰かが昼から夜へと時間を塗り替えたように、空気が変わった。 コツンコツンと自分のヒールの音が響く。外に向けられていた意識が急に自分の方に集中し、ひと握りの緊張を足に乗せながら進む。 廊下に張り出されている化粧品の広告に目を向けながら歩を進めていた時、自分と視線が合った。三人分ほどの横幅がある全身鏡が壁に組み込まれていたのだ。そんな鏡の中に写る自分と目が合った時、記憶が蘇ってきた。 深く被った帽子、目の下から顎まで広げられたマスク、毛玉まみれのスウェット、黒く汚れたスニーカー。今目の前にいる自分は、上品でモード感のある黒いワンピースを身に纏い、その色に合わせにいくように鋭く尖ったような化粧を施していた。 記憶の中にいる自分と今ここにいる自分とでは、顔立ちも身に付けているものもかなり異なっていた。しかし、何よりも変わっていたのは、表情そして背筋の伸び方だ。帽子の下からこちらを窺っていたあの目には、このワンピースの色よりも真っ暗な、深く深く沈むような絶望が滲んでいた。今の自分は、そんな暗闇を祓ってしまうほど自信のある表情を浮かべている。 洋服の毛玉も、靴の汚れも、今の自分が見れば見逃してしまうほど些細なものだったと思う。けれども、あの頃の自分にとってはそれらがこの大きな鏡の中心にすら見えるほど、根強い穢れだと感じていた。醜く哀れな自分を象徴するようだと。 もう、大丈夫だよ。 鏡が時空を越えることを願いながら、あの日の自分に微笑みかける。構内に残る秋の冷たさを味方にするように、プリーツを揺らしながらその場を後にした。
僕には足がない。これは生まれつき。 だから、車椅子で生活していた。 僕は今病院のベッドで寝ている。車に轢かれたから。 三日前、車椅子の車輪が道の凹んだところに引っかかってしまった。信号が変わると同時に車が突っ込んできた。向こうは信号しか見ていなかったのだろう。 痛かった。 母さんは毎日見舞いにきてくれる。 「ごめんね。私がちゃんとした身体に産んであげられなかったから」 そういって謝る。 僕は何も返さない。 声が出ないから。事故で喉が壊れた。 もし、声が出るのなら 「そんなことないよ。」っていうのに。 「産んでくれてありがとう」って言いたいのに。 自分を責め続ける母親に何も伝えられない。 あぁ痛いな。 「別に足なんていらない。」っていうのは嘘で、ちょっとだけ自分の足で歩いてみたかったけど。 足がないことは悪いことだけじゃなかったよ。 同じ身体障害をもった友達に出会えた。 腕のない和樹くんは僕の親友だ。もし腕があったら彼には会うことはできなかっただろう。 車椅子ならではの景色も見れた。 普通の人よりの少し低い目線だから、地面をせっせと歩く虫、散歩中のリードが伸び切るほど先を急ぐ犬、雨の日葉っぱに乗ったまぁるい雫。みんなよりも近くで見れたよ。 毎日がワクワクだった。 ――あ。 ペンを持つ左手が震える。事故で失ったのは利き手の右手。 僕は長くはないだろう。みんなは大丈夫だっていうけど、僕にはわかる。だから、伝えときたい。声はでないから、こうやって。 字が汚いのは利き手じゃないから、それはばかにしないでよね。 ペンをギュッと握り直す。 大嫌いな勉強だけど、一生懸命に教えてくれるから頑張ろうって思ったよ。先生。 みんなと違うから行きたくなかった普通の学校。でもね、みんな優しくて足がない分サポートしてくれた。クラスメイトたち大好き。 いつも忙しいのに、休日は僕を担いで公園を走った父さん。僕本当に自分で走ってる気分だった。 父さんの背中はずうっとおっきくて憧れだったよ。もう一回乗ってみたかったな。 和樹、君はいつも陽気でふざけてたよね。僕の手術前なんかはいつもより大袈裟にふざけて、病院の先生に怒られてたっけ。とんでもないやつ(笑)おかげで全然怖くなかったよ。君は本当にいいやつだ。 そして母さん。これだけは知っててほしい。 僕がもし生まれてなかったらこんな世界知ることはできなかった。 ありがとう。僕を産んでくれて。 みんなありがとう。 僕はほんっとうに幸せだった。 ――あの子が死んだ。 お医者さんは大丈夫だって言ったのに、急に容態は悪化した。 みんなが走っているのを眺めてたときも、私を見つけると辛さを見せないくらいの笑顔を見せてくれた。誰よりも優しい子だった。 ……なのに 最後は片手を失い、声も出せなくなってしまった。 私がちゃんと産んであげられなかったから。ごめん……本当にごめんなさい。 彼の寝ていたベッドを見つめる。彼がそこにいたであろう跡はまだ残っている。 私のせいでこの子はこんなに辛かったのに、私は生きててもいいのだろうか。 ――それなら、いっそ。 「ん?」 何かがベッドの端に挟まっていた。……手紙。 封には、ひどく震えた文字で『みんな、そして母さんへ』と書いてあった。 私はそっと手紙を開く。 もう聞けないはずの声が、そこにあった。
私はじっと、白紙の進路希望調査票を睨みつける。 漫画の世界が羨ましい。 ゴールが最初っから用意されているから。 この世界が魔物蔓延るファンタジーならば、第一希望に書くべきは『勇者』一択だ。 魔王を倒して世界を平和にしますと言っとけば、きっと先生も両親も納得する。 しかし、現実に魔王はいない。 ブンケイとリケイという四天王はいるけど、この四天王は分裂する。 ブンケイだと、ホウガクブやブンガクブ。 リケイだと、コウガクブやイガクブ。 キョウイクガクブは、どっちだっけ。 頭の中に魔物と遭遇した時のBGMが鳴り響き、ありもしないコマンド『にげる』を連打する。 「ないなーい。やりたいことなんてなーい」 両親は、私の好きにすればいいと言ってくれる。 でも、試しにブイチューバー育成の専門学校と言ったら、面白い冗談を聞いたように笑っていた。 好きにすればいいという両親の中に、ブイチューバーは入っていないということだ。 先生は、偏差値の高い学校を勧めてくれる。 実家から通うなら、一人暮らしをするなら、模擬テストの結果から考えると、 私の為でもあるのだろうが、学校の成績を少しでも上げるためだという心の声が透けて見える。 「つーか、社会も知らない高校生に進路なんて決めさせんなよー。未知のダンジョンすぎるー」 結局、自分の人生のゴールがまったく思いつかなかった私は、進路希望調査票を横にどけて、代わりに手紙を三通持ってくる。 差出人は、全部バラバラ。 秀才君からと、スポーツマン君からと、イケメン君からのラブレター。 うちの高校には、一年に何日かだけ、ラブレターで告白すれば告白成功率が上がるなんてジンクスがある。 その日に、まさか三人からラブレターが届くとは思わなかった。 「うーん」 私はじっと、未開封のラブレターを睨みつける。 漫画の世界が羨ましい。 ゴールが最初っから用意されているから。 この世界が愛と友情に汚染された恋愛漫画ならば、選ぶべきは一目惚れした『主人公』君一択だ。 私実は彼のことが好きなんだよねと親友に白状すれば、きっと幸せな恋人ライフが誕生する。 しかし、現実に主人公はいない。 良いところも悪いところもあるどころか、本音の部分を何にも知らない相手を、イイヒトソウという裏技みたいな概念で選ばざるを得ない。 「無理無理ー。彼氏なんていらねー」 私は、ラブレターも横にどけた。 空っぽになった机の上には、魔王を倒すための聖剣もなければ、主人公が泥だらけになって見つけてくれたキーホルダーもない。 あるのは、勿体ないという現実的な理由で買いかえていない、ぼろぼろの栞だけ。 私は栞を摘まんで、左右に振った。 「どこかに刺さって、実はここは漫画の中でしたーってなってくれないかな。そしたら、進路希望もすぐ埋まるのに」 作者不在の世界に中指を立てながら、私はベッドに飛び込んで現実逃避をすることにした。
雨粒が窓に付着している 後に重くなった雨粒は他の雨粒を吸収しながら 躓くように降りていき通り道を作る 一度、道ができてしまうと 他の雨粒たちも躓くように通りまで出て 道に着けば急いで降りていく そして暫く通る雨粒がなくなれば 道は無くなり雨粒の草原となる 雨粒も道なき道を行く時は何度も躓く そして歩き続けなければ絶えてしまう
この薄暗い部屋に閉じ込められて、一月が経った。部屋の中は質素な造りだが、ベッドは意外にも上質なマットレスで、シャワーとトイレも完備してあり、生活するには申し分ない。食事は野菜などの彩は無いが、三食差し入れられる。 堪えがたいことは、娯楽が少ないことだ。テレビやパソコンが無いのは勿論、所持していたスマートフォンも取り上げられている。何故かカバーを外された本だけは差し入れられるが、異常な状況では読む気力も湧かない。言わば、生きる楽しみを見いだせない空間。 犯人はわかっている。目の前にいる女だ。 「どうしてこんなことをするんだ」 鉄格子の向こうにそう詰問すれば、女はいつも困った様な表情をするばかりだった。 彼女のかつての交際相手に相談を受けたのが、出会いのきっかけだった。曰く、彼女は相手に尽くすタイプの女性で、しかしそれに際限が無い。ノイローゼになった彼が逃げ出し、身近にいた自分が次の寄生先として選ばれた。 意外にも彼女との生活は悪くはなかった。容姿は華美ではなく、常に地味な服装だったが、むしろ奥ゆかしく好感が持てる。流行の話題には疎いが、古文や歴史に造詣が深く、博識深い。聞いていた異常性を置いておけば、所謂大和撫子そのものだったのだ。 うまくいっていたはずだった。この場所に監禁されるまでは。 あの日は雪が降っていた。寒さに身を震わせ、数か月後に来る春を思い、道すがら在原業平や西行が詠んだ句について語った。 「和歌に詠まれる桜は、どうしてこうも魅力的なんだろう」 「昔は、今よりも目に入る色が少なかったですから、桜の初心な色ですら、貴重な彩、だったのでしょう」 「成程。そもそも現代とは環境が異なるか。僕もいつか全身で感激するような桜を見てみたいものだ」 「ええ、そうですね」 そんな些細な夢も語って、彼女も微笑んでいたというのに。 当夜、勧められるまま深酒をしてその後の記憶がない。目が覚めたらこの部屋にいた。初めは激昂して、それから諭すように、ある時は懇願に近い声色で、どんな言葉で尋ねても、彼女の答えは無いか、曖昧なものばかりだった。 彼女は、僕の思いを試しているのか? 監禁という行為が生み出す歪んだ関係性。被害者からの依存性を期待しているのだろうか。彼女の目的は、ただこうして廃れていく僕を、籠の外から眺めて居たいだけなのかもしれない。 薄暗い部屋で、食事と睡眠の数を数え、もう二月も経った。ひたすら薄暗闇の日々が続いたのだ。段々と、自分の中の何かがすり減っていくのを感じる。 「なあ、今日でもう二月だ。あんたはいつまでこんなことをするつもりなんだ?」 辛うじて、まだ忘れていなかった声と言葉で問いかける。どうせ返事は無い。宛てのない言葉は、壁の中に消えていってしまうのだろう。ただの独白だ。 そう自嘲しながらも、久々にあの困った顔つきを拝んでやろうと、俯いていた顔を上げた。彼女の唇が動いた。 「あと、二週間、くらい?」 食い下がるべきだったろうが、驚き、言葉が出ない。明確に期限を口にしたのはこれが初めてだった。彼女に何の変化があったのか。 その日を皮切りに、彼女は、毎日私の言葉に返事をするようになった。 「もうちょっと、今日は、まだ」 「まだ早いの、だめ」 「きょ、今日は、雨が降ったから」 ある日、聞きなれない金属音と共に、いつもとは異なる微妙な風の流れを感じた。ひた、ひた、と足音が近づく。顔を上げると、鉄格子の向こうの彼女が傍にいた。 「あの、これ」 差し出されたものは、黒いアイマスクだった。付けろというのだろうか。視線で問いかけても、困った表情をするだけだから、望まれるままに装着した。手を引かれ、立ち上がる様促される。僕は彼女のするまま、素直に従った。 「どこに向かっているんだ」 答えのないまま、歩いた。あの仄暗闇から解放されるのならば、どこでもいい。僕はあの薄暗い部屋を出たのだ。 途中から、足の裏に感じていたものが、コンクリートよりも柔らかい感触に変わった。風にのって、土と草の匂いがする。 「取ります、ね」 もう随分歩いたと疲労を感じ始めた頃、ふと立ち止まって彼女は言った。 髪が巻き込まれ頭皮が引っ張られたが、些細な問題だった。 流れ込む光の束に、すぐには目を開けなかった。ゆっくりと瞼の裏に馴染ませ、恐る恐る開いていく。 色の洪水だった。失くしていた色、求めていた色、知っていたはずのものが、未知のものに見えた。背丈を優に超える幹は、大地の色を吸い込んでいる。風に舞い散る花びらには、一枚一枚色があった。全て、異なる色なのだ。 言葉にならない僕に、彼女は嬉しそうに笑った。久しぶりに見た笑顔だ。僕は、彼女が僕を閉じ込めた理由を悟った。後はただ、手を握り締めて、桜を眺めた。
どうやら私は、一日だけ別の人物と身体が入れ替わっていた(?)らしい。 「突然、学校に来たから、みんな驚いていたよ」 唯一の友は、とつとつと昨日の私について語ってくれた。それは普段の私からは考えられないような言動の連続で、よくもふざけたマネをしてくれたな、と本気で憤ったりもした。 悲しいかな、私は昨日のことを一つも覚えていないのに。私と身体が入れ替わったヤツは、好き勝手に反転ライフを楽しんだというのか。もしヤツを見つけたら、思いっきり肩パンしてやりたい。 「でも、久々に学校これたじゃん」 そう言ってくれるが友人よ、当の私としては複雑なのだ。 いや、でも、それ、私が学校に行ったわけじゃないし。いや、私は確かに行ったんだけど、本来の私の魂はどこかに出歩いていて、別人の魂が私の身体を学校に連れていっただけで……。ていうか結局、私自身は、今日も学校に行けなかったし……。とでも言ってやろうか。 「わたし、嬉しかったよ」 こちらを見て、友人は笑う。その顔が心底うれしそうなので、私は無言の相づちを返すに留めておいた。
コーヒーと美味しいパン 二人は並んで座っている いつもの店のいつものメニュー 一人は肘をついてコーヒーを飲む 一人は腕を組んでいる よく晴れた空を冷房の効いている店内で眺めている 何気ない会話と笑顔 目はたまにしか合わない 二人は同じ方を向きながら この先を探している
「ちょっと!あんた!脱いだら脱ぎっぱなしやめなさいっていつまで言ったらわかるんだい!?」 「あぁ…。はいはい。やりますよ」 俺は毎日妻に怒られっぱなしだ。それもそうだ。俺はだらしがないからだ。 「もういい加減にしなさんな」 俺のどこを好きになってこの妻は結婚してくれたのか。きっと今は離婚したいけど経済的に俺と暮らした方がいいと思っていて一緒にいてくれてるのだろう。 そう思うとなんだか、俺って一体…と思ってしまった。 「あ、そうそう。あんた今日暇でしょ?ちょっとさ、スーパーの特売。行ってきてよ。」 「えー。たまの休みくらい好きにさせろよー」 「そんなこと言ったら夕飯つくらないわよ!?」 「はぁ、へいへい」 俺は妻に脅され、渋々スーパーへ出かけることにした。 そしてそれは突然の出来事だった。 そう。なんだか鼻がムズムズし出したのだ。 「へっっっくしょょょん!!!!」 そして俺は勢いよくくしゃみをした。 俺のくしゃみによって、目の前に生えていた木が根本から倒れた。 くしゃみをしたのは久々だったが、木が倒れるほどの威力とは。俺は驚きのあまり現実ではないと思った。 もちろん、そこにいたのは俺1人ではなく、街の住民もいた。そいつらも目をまんまるくしてその光景を目に立ち尽くしていた。 「おいなんの音だ?」 「木が倒れたらしいよ。」 「あのおじちゃんがくしゃみで倒したんだ。」 「あのおじさんが倒したんだって。」 そんなことを住民が言いながら、家々からゾロゾロとこの光景を見に住民が出てきた。 「これはなんと!!くしゃみ王じゃぁぁ!」 いきなりこの地域で最年長の老人が大声を上げて言った。 「おい!くしゃみ王だってよ!」 「くしゃみ王!かっこいいわ!」 「すごいすごい!握手して!」 その老人の発言により、みんな一斉になって俺を讃え出した。 こんな平凡でいつもだらしなくて妻に怒られてる俺がこんなにも讃えられていいのだろうか。そんなことを思いつつ、俺は調子にのってそのままスーパーへ行った。 そして俺はつい、いい気になってスーパーの店員さんに、 「おれ、くしゃみ王なんすよ。」 と言った。 店員は首を傾げ。 「ほ、ほぉ。なんか、凄そうっすね。」 と、俺に目を合わせずに言い放った。 とてもわけがわからない様子だった。 急に現実に戻った気がしてなんだか恥ずかしかった。 俺の地域の住民がおかしいのか。それともこの店員の態度がおかしいのか。はたまた俺のくしゃみがどうかしてるのか。 俺はもうよくわからず、何年間も適当に使ってた脳みそをフル回転させて考えたが、結局よく分からないままだった。 なんだくしゃみ王って。とか思いながら俺は重い特売の商品を持って家へ帰った。 あ、そういえば薙ぎ倒した木どうしよう…。
梅雨の温室はさみしくて、でもさわがしい。雨がなかに入れろと、しきりに壁をたたく。それが目に見えているから余計にうるさい。 そんな雨のなかにできた大きな余白に、ふわりあの香り。 さわがしさが気にならないのか、ひとりの少女が大きなイスに腰かけ、ひざに本を置いている。その姿は、この空間の雰囲気にひどく馴染んでいる。 ―何を読んでるんだい? 少女は、あからさまに顔をそむける。 雨の音より、僕の声のほうがよっぽど気に障るらしい。 ―すまなかったね イスの上で窮屈そうに体をひねり、少女は僕に背を向ける。 やれやれ、ずいぶんと嫌われてしまったな。 僕は、その少女から離れたベンチに腰を下ろした。 さて… カバンに折りたたみの傘と文庫本は入れておけよ。じいさんからの忠告が、今日ほど役に立ったことはない。 読んでいて気がついた。雨の音は、本を読むのに心地いいものだと。 ―そういうことを言いたかったのか? いや、それはないか ふと、あの香り。あの少女が僕の横に、静かにカップを置く。 ―僕にかい? ただ頷くだけの少女に、 ―ありがとう 僕のぎこちない笑顔は、果たして通じただろうか。 少女は行ってしまった。ふたたび大きなイスに腰をかけると、先ほどまでと同じくひざに本を置いた。きれいな花のようなその姿。けれど彼女にふれることは、誰にも許されることではないようにも感じられる。 あながち、嫌われたわけでもなかったのかな。よくわからんな。いや、いままで僕が、女性の考えを理解できたことなんて、あったっていうのか… 梅雨の温室はさみしくて、でもさわがしくて。いろいろ考えさせられる。 まったく、やれやれだな。
「正しいものは損をしていくなー」 放課後の教室で私と話していた先輩が叫んだ。 「そうなんですか?」 私は先輩の言っていることがしっくりこなくて訊いた。 「そうだよ。我がかわいい後輩に教えよう!正しいものは損をする」 「はぁ」 なんだか胡散臭い。 「例えば、給食エプロンを家に忘れてきた人がいるとするでしょ。その人は給食の準備をしなくていい。正しくエプロンを持ってきた人は持ってきてない人の分の尻拭いをしないといけない。ほら正しさは損でしょ?」 「まあ、たしかに。でも正しいってかっこよくないですか?」 普段バカばっかりしている先輩が突然具体例などを上げ出してびっくりした。 「たしかにかっこいいかもね。でもねそのかっこよさはカッコ悪くなるんだよ。」 「どういうことですか?」 「中ニぐらいになると正しいことはダサいと言われるようになるの。女子はみんなスカートを折るし、男子はみんな廊下を走る。校則を守って、正しい長さでスカートを履いていたら影で笑われる。」 「そんな」 私も来年は笑われてしまうのかな。 「あと私先週修学旅行だったじゃん」 「はい」 「スマホ持っていったらダメなのね。でも私の周りはみんな持ってきてた。私だけ持って行かなかった。部屋に集まった時もみんなスマホいじっててさ、私だけやることないの。正しさなんて捨てれば良かったーって後悔した。」 「先生にはバレなかったんですか?」 「先生も先生だよ。持ってくんなって言ったのに修学旅行だからか見逃すの」 「それはそれは」 私はなんだか先輩をいたたまれない気持ちになった。 「というか先輩、こんな具体的な例あげながら話すなんて頭良さそうですね」 「えー、私は頭いいよ」 「いつもバカばっかじゃないですか」 「こう見えて学年三位なんだよ」 「え、マジですか」 「マジ」 先輩について知らないことまだまだたくさんあるな。 正しいさ、か。 私が先輩を好きなことは世間的に正しいのでしょうか。だって私は損ばかりしている。 先輩にそう訊きたいけど、そしたら先輩困っちゃいますよね。 だって先輩には彼氏がいるんですから。
「月が、綺麗でs」 瞬間、俺はバズーカをぶっ放した。 バズーカの弾は月まで一直線に飛んでって、見事に月を爆破した。 雨の代わりに降って来る月の破片。 呆然と夜空を見上げる彼女を見ながら、俺は最高の笑顔を作った。 「君の言葉が聞きたいな」 数秒後、なんか世界のバランスが崩れたらしく、世界が滅んだ。 彼女の返事は、結局聞けずじまい。
「貴女が落としたのは、田中君ですか? それとも山田君ですか?」 学校の庭池から現れた女神様は、笑顔で私に問いかけてきた。 私の目の前で田中と山田が仲良く庭池に飛び込んで、何をやってるんだこの馬鹿二人はと思っていたが、そういうことか。 私に告白をする勇気がなかったから、私に二人のどちらかを選ばせる気らしい。 馬鹿二人は私に手を伸ばしてきて、頭を下げた。 「「よろしくお願いします!」」 私は溜息をついた後、少しだけ考えた。 本当のことを言うと、正直な人だと言われて、田中と山田を押し付けられる。 どちらも落としてないというのは愚策だ。 しかし、間違っても田中を落としたとも、山田を落としたとも言いたくはない。 馬鹿二人の思い通りになるなんて、絶対ごめんだ。 「私が落としたのは、鈴木君です」 「「え?」」 馬鹿二人がハモる中、女神様は鬼のような形相へと変わった。 「貴女は嘘つきな人ですね。そんな貴女に渡すものなど、何一つありません」 「どーぞ、どーぞ」 私がハンカチをひらひら振ると、女神様は馬鹿二人を掴んだまま庭池へと沈んでいった。 「え!? ちょ、待っ!」 「女神様! 止めて止めて止めて!」 馬鹿二人は必死に抵抗をしていたが、抵抗虚しく女神様と共に庭池に沈み、あっという間に見えなくなった。 果たして、二人はどこに行ってしまったのか。 「あれ? 私、ここで何してたんだっけ?」 私は何故か庭池を眺めていた。 穏やかな水面からは、元気に泳ぐ鯉が見えた。 私は周囲を見渡して、結局何をしに来たのか思い出せなかったので、昼食を買うために購買へと向かった。
日頃あれだけ不倫をする人の事を馬鹿にしていたのに、自分が不倫をする事になるとは人生とは何が起こるか分からない。 不倫をしてみて分かったが、一度始まってしまうと中々やめられない。強い刺激の背徳感と、結婚しているにもかかわらず、私の事を特別に想ってくれている。と言う充足感が脳をおかしくしている。だが次第に慣れてしまい、今やSEXが習慣化している。 不倫になる前、つまり抱かれる前がイチャイチャして一番楽しかったが、一緒にホテルに入ってしまったら、後は緩やかに滑り落ちるだけだ。 今もいつものファミレスで彼を待っている。彼と出会ったファミレスで。
「お一人ですか?」 仕事帰り、ファミレスで食事を済ませ、お酒を飲んでいた。毎日、仕事ばかりで料理はとっくに諦めて、洗濯もコインランドリーで済ましている。家事あきらめました。ファミレス最高。お酒最高。そんな私に声をかける男性がいた。顔はまあまあだが雰囲気は良い 「え?は、はい」 「じゃあ、お邪魔しようかな」 男性は同じ年か少し上くらい 彼も私と同じお酒を注文した 「会社員の仕事帰りと言う感じですね」 にこやかに彼が言う 「えぇ。バリバリ会社員です。会社員ですか?」 「えぇ。会社員です。バリバリ。いや、パリパリくらいかな」 どういう事?と二人で笑う 彼の注文したお酒が来た 「僕は森田ヒカルと言います」 「私は木部ひかりです」 よろしくお願いしますと乾杯をする 美味しいものを食べて、お酒を飲んで、話し相手がいて、私の事に興味があって、雰囲気が良い。こんな楽しい事は久しぶりだなと思いながら話していた。自然と笑顔になる。 結局ファミレスには2時間ほどで店を出た。 お会計は彼が持ってくれて、私も払うと言ったのだが、いいからいいからと言われそのまま甘える。別れ際に連絡先を聞かれなかったので、慌てて確かめる 「次も一緒に飲みますか?」 飲みませんかだと、すがっている感じが出るし、飲めますか?だと切実過ぎて怖いかなと。それで飲みますか?になってしまった。 「僕、結婚してるんです」 「え!?…じゃあ何で」 「すみません」 「すみませんじゃなくて…」 「では」 「ちょ…」 彼は歩き出して直ぐに止まり振り向いて言う 「僕達、名前が似てますね」 「そんなの、どうでもいいよ!」 「じゃあ!アデュー」 「じゃあ!じゃないよ!もう、何がアデューだよ」 帰りコンビニで追加のビールを2リットル買って帰った。
ある日の午後。ようやく男が目を覚ました。 「結局、負けかよ…」 サッカーの国際試合を見るため、仕事を休んだ。 カーテンの隙間からは、濃い光が差し込んでいる。 照らされたテーブルの上には、妻からのメモが。 ──友達とランチに行ってくるね。夕方には帰ります。 昼ごはんはチンして食べてね。 ソファーに深く座り、テレビを点けた。 「今朝の試合の結果です」 アナウンサーが残念そうな顔で伝えている。 「試合には負けましたが、サポーターの行動が世界の方々から称賛されてます」 観客席で青いビニール袋を手に、ゴミを拾う人たち。 「素晴らしい光景ですね。では、また来週お会いしましょう」 男は画面を見ながら、鼻先で笑った。 エンディング。 右端には、 ──本日午後の存在価値 全国平均 76% 次の朝。 洗面所に置いてある体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 95% 液晶パネルには、自分の存在価値が%で表示される。 ──生まれたばかりの赤ちゃんは存在価値100%らしい。 誰かが言ってたな。まぁ、どうでもいい。 「あなた、お弁当できたわよ」 妻は肩までの髪を耳にかけながら、片足をそっと乗せた。 ──体重 48キロ 存在価値 95% 「ねぇ…今晩、ちょっと話があるんだけど」 「なに?」 「仕事から帰ってからでいいわ」 夕食後、妻が話を切り出した。 「あのね。友達がパート募集してるから来ないって誘われたんだけど」 「どうしたいの」 「週に3日くらいだからね。お小遣い程度にはなるかな」 「いんじゃない。でも、無理しないでね」 「ありがと…」 妻はスマホを手に、友達へラインを送った。 窓の向こうが、薄暗くなる。 しばらくのあいだ、部屋には着信音だけが響いていた。 「先に行くね」 妻が弁当をバッグに入れ、もう一つをテーブルに置いた。 「あぁ、気をつけて…あのバッグ、初めて見たな」 男は体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 90% ほんの少し、胸の奥がざわついた。 スーパーのビニール袋を手に、妻が帰ってきた。 「ごめん、遅くなった。今から晩ごはん作るね」 惣菜をパックから皿に移し替え、レンジに入れる。 「あのね、店長から正社員にならないかって言われた」 嬉しそうな横顔。 「そういえば、あなたの工場、外国人の従業員雇ったんでしょ。なんか大変だね」 男は洗面所に行き、体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 70% しばらく、数字を見つめていた。 テレビでは、豪雨被害のニュースが流れていた。 「なぁ…ボランティアに行ってみようかな」 男の声に、妻が振り返る。 その顔は、口元だけが笑っていた。
お昼にたべていたそぼろ弁当 そこから 三色にするなら、そぼろとたまごと あと何にする、との話題に ほうれん草のごま和え と誰かが言い いっしょですねえ とまた誰かが言う その流れからさくらでんぶへと話はうつり あれはいったいなんだろうかと 調べればそれですむこと けれど誰もそれをしない 知りたいのではない 求めているのは なんだろうね なんでしょうね というやり取りであって その場に流れる同じ色の体温だ 家に帰ってから「のの」に さくらでんぶってなんだろうね と聞いてみる 「のの」は そっぽを向くだけ 「のの」は 共感を知らない
どうしてだか分からないのだが人肌に触れねば死んでしまう、そんな予感がした。 本能のような、抗いがたい衝動が僕を突き動かした。 僕は身体に重くのしかかる毛布を力いっぱい蹴り飛ばし、テーブルの上に置かれたスマホをつかんだ。 無我夢中で通話履歴から君の名前を探す。まあ、探すといっても履歴は君との通話ばかりだから、すぐに見つけることができた。 いつもと同じ、3コール目で君は電話に出た。 僕はこの、どうしようもなく醜い感情を言葉にもならぬ言葉で彼女へぶつけた。 スマホの先で君が息をのむのが分かる。 耐えがたい沈黙。 僕の心にはすでに後悔の嵐が吹き荒れていた。 しかし、それと同時にこうするしかなかったのだという開き直る心もあった。こうしなければ、今にも死んでしまいそうなんだ。 「……今からそっちに行くわ。」 君は、それまでの沈黙は何かの間違いだとでもいうようにあっけらかんとした様子でそう言った。 僕は飼い主が帰ってきたときの子犬のように飛び跳ねて喜んだ。寝起きだからだろうか、あちこちの関節がギシギシと音を立てて、軋む。 「じゃあ、5分後に着くから。いい子で待っててね。」 どうやら君は電話を切り忘れてしまったらしい。君がドアを開ける音、君が鍵を鳴らす音、君がエンジンをふかす音が順々にスピーカーから流れてくる。 カッチカッチ、というウインカー音でいくつ交差点を曲がったのかが分かる。 僕の家はもう目と鼻の先だ。窓ガラスに張り付いて君のバイクが見えるのを待つ。 「ドアを開けて!」 突然、スピーカー越しの君が鬼気迫る声で言った。 どうして、そんなにあせっているの? 君が最後の角を曲がる。 君は大切な、大切なバイクを雑に乗り捨てると僕の部屋に駆け込んだ。 少し遅れて無数の屍たちが角を曲がってくるのが見える。その顔はみな、血の通わない鼠色で全く生気が感じられない。 僕は急いでドアを閉め、鍵をかけた。 ご......めん、なんで、わす、れ、て、t 「もういいの、いいのよ。」 君は僕を優しく抱き寄せた。 カーテンの隙間から差し込む、やわらかな斜光だけが僕ら二人の存在を示していた。 僕はゆっくりと君の雪のような首筋に歯を突き立てた。
鉄槌が下った それでも立ち上がる 折れない心 折れない足 日頃の疲れと寝不足が重なり、ぼんやりしていたら、仕事中に怪我をした。カゴ車という半開きの檻のようなものを倒してしまい、足に当たった。 ガシャーン その瞬間、私に取り憑いていた睡魔は檻に閉じ込められた。一気に眠気が吹き飛んだ。 翌日もいつもどおり仕事を出来たので、たぶん骨折はしていない。 数日たった今、私の足は腐りかけのバナナのようになっている。 半年前に骨密度検査をした。 「あなたの骨は強いほうね」と保健師に言われた。 検査結果には、同年齢の人に比べて110%の骨密度であることが記載されていた。 毎日、納豆、チーズ、牛乳、ビタミンDのサプリを摂取している。 骨だけに、コツコツとカルシウム貯金をしてきて良かったと思う。 さてと、痛みも引いてきたし、たまにはお散歩しようかな。
57577に投稿した短歌です。 星雲をのせた新作カプチーノ 飲めば安眠「おやすみなさい」 開店の合図と同時に飛び込んだ 「星月夜のカフェラテ一つ」 片想い曹達の上から眺めてる パンケーキに恋するアイス ティーバッグを引き揚げながら心底に 寝かせた恋も取り出せたなら 秘めていた想いを濾して淹れました この珈琲の産地はあなた 冷ややかなティースプーンに撫ぜられて 砂糖を溶かす照れ屋な珈琲 シロップの代わりに差し出されたのは とびきり甘い「好き」の二文字 フィルターが目詰まりしてた原因は 砕けた夢を吸い込んだから ごうごうと近付く台風の足音 掃除機片手にいざ迎え討つ 憂鬱を吸い込むことも出来ないで ゴミで腹が満ちては寝るばかり 朝露に葉の色移り風に揺れ 宛ら泳ぐ緑の鯨 搭乗を待つ雨粒が空港に 犇めく明日は梅雨入り予報 感情のスクラップブック作ろうと 広げた雑誌悲哀ばかり お日様にころころ燥ぐミニトマト だし巻き玉子は日向ぼっこ中 太陽を困らせたいと天気雨 こっちも困るピクニック中止?
飴色を指でなぞると、一本鮮やかな線が引ける。 埃が積もった机にはインクの跡が所々残っている。ここで、いくつもの物語が生まれた。 椅子の背に体を預けると、キィと小さく鳴く。彼を支え続けた椅子も、さすがに御老体らしい。 天井は黄色く変色している。禁煙するように何度も言ったのに、ついぞ聞いてくれなかった。だから肺炎でこの世を去ることになんかなるのだ。 「……遺品整理」 呟いて、改めて部屋の中を見る。ところ狭しと積み上がった本の山、山、山。渋い顔にもなる。 主人がいなくなった書斎は、他人のようだ。子供の頃はあんなに親しかったのに、今は距離を感じる。 もう何年も来てなかったし、当然か。 私は立ち上がり、窓を開ける。カビ臭い部屋へ一気に新緑の香りが流れ込む。 風に吹かれたのかバサリと、机から小さな手帳が落ちた。手帳を開くと、物語のメモが雑多に書かれていた。 おじいちゃんは。 おじいちゃんは、心残りは無かっただろうか。 入院中も、ずっと新しい物語の構想を練っていた。まだまだ書きたい物語が沢山あったのだろう。 もう、大好きな彼の世界は新しく綴られない。 ようやく思い知ったそ喪失感が、ボタボタと零れて手帳を濡らした。
今日は架空の練馬の歴史の話をしよう。 練馬には地下精神病院があるのだがそこの書庫には昔の縄文遺跡やら今まで能力はあるが現代社会に適応できなかった人達の膨大な記録データがある。 精神病院から抜け出して近くの小学校に入ってくる患者は海外の諜報機関に情報を盗まれる前に頭のいい子供に秘密を託そうと入っていく。 しかし子供は授業に忙しいのであまり情報を受け取れない。 精神病院の表向きの顔は治療療育だが実際には地下精神病院では海外の諜報機関と戦う傭兵や資料を作る学者を育てる機関である。 それを知って教育を終えた子供は大人になると国内海外を問わずいろんな所に学び働きに行く。 練馬の夜中が車やバイクで騒がしいのはそのためだ。 練馬は鳥が多いのだが鳥が餌にするネズミが物語を紡ぎ猫がそれを取ろうとするので有楽町線で行けるテーマパークにはヒロインズ達は鳥の声を聞いてそれで情報を集めに行く。 犬人間は基本的に家から出ないがたまに近所にいる犬を撫でに行く。 皆遊んでいるのだが遊びながら仕事もしている。 地下精神病院は巨大企業体の買収にあいそうなので色々多角的に経営を展開している。 江古田のミュージシャンはカボチャの馬車や神田川のせせらぎなど一見すると意味の無いことを歌っているが鳥達がその情報を病院に運ぶので実はかなりな仕事をしている。 石神井公園の照姫は滅ぼされそうで何代も転生している。 大泉学園の教会には無念で病気で亡くなっていった人達が天使となって循環し様々な母親父親に生まれ変わる。 まあ他にも色々あるが話が長くなるので練馬にはそんな架空の歴史があると知って貰えると嬉しい。
皆は一人の時間をどうやって過ごしているのだろうか。 休日前夜、一人きりの部屋で何をしているのか。ふと気になりだした。 ゲームに没頭していたり、ドラマ、映画で感動したり、バラエティーを観て死ぬほど笑っていたり 食べたい物を好きなだけ食べたり飲んだり マインドフルネスな過ごし方もあるだろう どちらにしても、素の自分がそこにはいるのだろう その姿を見てみたいなと思い始めて、その思いから抜け出せなくなってしまったので、自ら足を踏み入れてみた ネット検索していると、いわゆる裏サイトに一般の部屋を盗撮し、ライブ配信しているのを発見した。 男性も女性もいる ラーメンを食べている男性がいたり、髪をドライヤーで乾かしている女性が写っていたり、その中で私の知っている男性がいた。会社の上司だがセクハラが酷くて女子に嫌われている。そいつに弱みを握られたら直ぐ辞めようと皆で話し合っている。 その気持ち悪い上司が暗い部屋でPC画面を夢中になって覗き込んでいる その画面にPCを覗き込む私の映像が流れていた