「入社おめでとう。君たちも社会人になったことだし、ここらで生命保険に入っておくのがいいぞ。会社の推奨はこれだ」 とりあえず入った。 「確定拠出年金を始めないか? 毎月の給料からコツコツと積みあげて、将来の年金を増やせるんだ」 とりあえず入った。 「持株会に入らないか? 毎月の給料から少額の株を買って配当をもらうんだ。今なら、一口につき○○%の株プレゼントもあってお得だぞ」 とりあえず入った。 正直、何の目的で、将来どうなるのかよくわかっていない。 しかし、会社が大丈夫と言っているのなら、きっと大丈夫なのだろう。 上司の指示を聞くのが嫌だとフリーランスになった友達たちは、成長が楽しいと喜びながら、仕事がない貯蓄が不安だと嘆いている。 ぼくは、成長なんて感じないけど、仕事や貯蓄への不安もない。 多分会社が何とかしてくれる。 「酒、うま」 どっちが幸せなんだろうか、なんて考えるのも面倒になって、とりあえずお酒を飲んで寝た。
「あっちで紙芝居屋さんがやってるよ。」 行ってみる。 いない。 「空を見上げればタイムマシーンが飛んでいるよ。」 見当たらない。 「おっぱいを触らせてくれるおねーさんが街に来ているよ。」 それもいない。 最近そういうことを言う人を見ない。 最近詐欺犯罪が増えているらしい。 ああ、仕方なく仕事をしているのか。
「あっちゃん……それって……まさか!?」 とある小学校、体育前の教室中に、一人の男子の声が響く。 何事かと集まったその他の男子たちも同様に、驚きの声をあげる。 その視線の先では、あっちゃんと呼ばれた男子が、両手に腰を当てて、ドヤ顔をしている。 あっちゃんは、トランクスを履いていたのだ。 「ト、トランクスだと!?」 「マジかよ! 白ブリーフ卒業したのか!?」 「あ……あっちゃんが……大人に……」 白ブリーフを履く他の男子たちは、あっちゃんのトランクスを見つめながら。口々に感想を言う。 股間に集まる視線。 股間に集まる尊敬の眼差し。 あっちゃんはその日、教室のヒーローなった。 そして次の体育の時間。 「い、いずみくんもトランクスだ!?」 「うっちゃんもかよ!」 「え、えーすけ、お前まで……」 「おっくん……お前までそっち側に……」 トランクスが増えた。 「お前たちを、トランクス四天王に任命する!」 「「「「はっ!」」」」 トランクス四天王が誕生した。 その日以来、体育の時間が来るたびに、トランクスを履く男子は増えていった。 あっちゃんから一人始まったトランクス派は、次々勢力を増していき、あっという間に白ブリーフ派の数を逆転した。 「おい、お前まだ白ブリーフなのかよ」 そして、巨大な勢力は、時に差別を生み出す。 それは人類の歴史を紐解いても、当然の流れ、 少数派となった白ブリーフ派の男子たちは、時に嘲笑の対象となり、人目を忍んでこそこそと着替えるようになった。 だが、差別の手は緩まない。 カーテンに隠れて着替える男子から、差別の手が容赦なくカーテンを引きはがしにかかる。 「白ブリーフがいたぞおお!!」 「っせぇな! 白ブリーフの何が駄目なんだよ! 俺は気に入ってんだよ、白ブリーフ!」 「白ブリーフが怒ったぞー!」 白ブリーフ派は、ただ耐えた。 白ブリーフ派の男子も、もちろんトランクス派へと変わりたいのだ。 だが、そこには大きな壁がある。 国家の法律のごとき、大きな壁が。 家庭内ルールである。 家庭の絶対支配者である両親に懇願した結果。 「まだ履けるでしょ? もったいない」 「トランクスはまだ早い」 「よそはよそ、うちはうち」 絶対的支配者の一言によって、叩きつぶされたのだ。 こうなれば、たかが小学生に打つ手はない。 ただ支配と差別の下、慎ましく生きるしかないのだ。 「やーい」 「やめろよ!」 だが、トランクス派を作り上げたのがあっちゃんなら、その差別を止めたのもまた、あっちゃんだった。 「白ブリーフだからって悪く言うのは、俺が許さん! 色んな事情があるんだよ!」 教室はシンと静まり返った。 「……だよな」 「……うん」 「……ごめん」 そして、ちらほらと、謝罪が飛んだ。 あっちゃんは満足した顔で頷き、白ブリーフ派の方へと近寄る。 警戒する白ブリーフ派に、あっちゃんは優しく言った。 「トランクス……履きたいか?」 「え!?」 思いがけない言葉に、白ブリーフ派の男子たちは目を丸くする。 互いに顔を見合わせ。 「履き……たい……」 そう、絞り出した。 「そうか!」 あっちゃんは目を輝かせて立ち上がり、教室の男子たちに向かって叫ぶ。 「この中に、新品のトランクスが家にあるやつはいるか? あるなら一枚、こっそりと持ってきて、こいつらに渡してやって欲しい! こいつらだって、好きで白ブリーフを履いてるんじゃないんだ! 俺は、全員がトランクスを履ける自由があるべきだと思うんだ! 頼む! この通りだ!」 あっちゃんは頭を下げた。 その熱意に。 その夢に。 「おおおおおお!」 「俺持ってる! 次の体育の時に持ってくるぜ!」 「俺もだ!」 男子たちの心は一つになった。 そして、来るべき次の体育、の前の着替え時間。 「似合うじゃねえか」 すべての男子が、トランクスを履いた。 トランクスのみを身に着ける男子たちは、この日、男子から男になった。 「これで俺たちも、大人だああああ!」 「「「「おおおおお!!」」」」 教室中を走り回って、その功績を皆でたたえ合った。 教室を飛び出して、廊下で暴れ回った。 まるで、国を挙げて行う盛大なパレードのようだった。 「ぎゃああああああ」 「せんせー! 男子たちがー!!」 「変態ー!!」 パレードは続いた。 教師に止められるまでずっと。
海に行けない河童は家で土器を作る。 川が水不足になった時に皿を潤すためだ。 ときどき山から出てきて村娘を木陰から見ている。 気になる村娘の家に採った魚や貝などを置いていったりする。 けなげだが村娘は誰が置いていったんだろうと不思議がる。 河童は作った土器を家の中に置いて昼寝している。 村の農民が作物を作る。 河童はキュウリが欲しい。 でも村人に姿を見られると怖がられるので夜こっそりと畑のキュウリを一本だけ採っていく。 村人も猿かなんかが採っていったんだろうとあまり気にしない。 旅の坊さんが村娘の家を訪ねる。 一晩宿を貸してほしいと。 坊さんは隠しているがこの坊さんは実は高名な僧なので村娘の親が夜坊さんに村娘を添い遂げさせようとする。 坊さんは村娘にお前さんを好いている奴が近くにいるよと話す。 家の陰に隠れて様子を見ていた河童は驚く。 坊さんは持っていた琵琶を取り出し読経のような浪曲を奏でる。 河童が人間の姿になる。 どうやら野暮用の人が来たようだ、娘さん相手してやりなさい、と坊さんは夜の山に散歩しに行く。 人間の若者の姿になった河童が娘さんの前に現れる。 娘さんは青年の姿になった河童と一夜をともに過ごし子を身ごもる。 旅の坊さんは一晩山で過ごした時に近くの廃寺で一生を一人で過ごした坊主のミイラを拝む。 「ほっほ。お前さんの魂は新しく生まれ変わるよ。世の中不思議なこともあるもんじゃな。」
「落としましたよ」 目の前を歩いていた人がハンカチを落としたので、拾って声をかけた。 その人は立ち止まって私を見て、無言でハンカチをとって、立ち去って言った。 別に感謝されたかったわけじゃない。 でも、一言お礼があってもいいんじゃないかと思ってしまった私は、心が狭いのだろうか。 コスパタイパを叫びながら人間の温かみを忘れた現代人を見ると、まるで心の氷河期の様だと思ってしまった。
地下鉄の改札から218秒かけて階段を駆け上がった。地下の凄惨な状況と、うって変わって雲一つない快晴が拡がっている。男は足下で繰り広げられた惨事を思い返す。南改札からほど近くのゴミ箱から、火柱があがる。構内にいた人々が悲鳴を上げ立ち竦む。男は自分のほかに17人いたなと思い出す。男は数字に正確だった。火はすぐさま燃え移り、人々の行く手を阻んだが、男の前には道があった。そこから一気に階段を駆け上がった。階段からは男以外上がってこない。先ほどからけたたましい音が聞こえていたが、今度は幾人もの足音が聞こえる。スマホを見ると、操作してから540秒経っていた。視線を足下から元に戻して、思わず笑みがこぼれる。 迷える子羊たちが火のないところに立って煙に巻かれている。そんな心持ちで少女は煙のなかにいた。周りにいる自分の3周分は生きてきただろう人々のほうが、よっぽど子羊だなと思う。メーメー鳴いてどうしようもない。ラムなら焼けてもいい匂いなのにな、とそうはならない予感をもってげんなりする。火の手がまた強くなる。煙で匂いも分からないかと思い直す。煙の奥に人影が見える。爆発の瞬間に聞いたアラーム音はラッパの音なのかもしれないと思った。天使のお迎えかしら、子羊にはピッタリねと少女は大きな人影に抱えられながら、笑みをこぼす。 今のオレは世界に見捨てられた。そんな諦観を抱いて、青年は構内トイレ個室に閉じこもった。諦観は青年のなかにずっと沈殿していた。青年がとっておきのカスタマイズを施していたものだったスマホもさっきゴミ箱に捨てた。遠巻きに見た火柱、煙に巻かれる人々、異様な光景だった。パニックで叫ぶ声、逃げ場がないと喚く声、青年にとってはオレたちは捨てられたんだと思える十分な証拠だった。そんな喧騒を避けるように青年はトイレに隠れた。入口あたりが崩れたのか、大きな音を立てたあと、外の喧騒もやがて聞こえなくなった。青年にとって、世界はこの狭い個室だけだった。身体が熱くなる、もう火はそこまで来ているようだった。見捨てられたのはオレだけじゃない、そう青年は笑みをこぼした。 現場に居合わせた男性からの通報があり、通報から9分後に駆けつけた消防隊によって16人が救助されました。犯人は依然として不明、爆弾はタイマーをセットしたスマホに直結したものとみられています。崩落が激しい為、これ以上の捜索は断念される見通しです。 了
1月1日 男性 餅を喉に詰まらせ窒息死 1月1日 男性 ヒートショックにより死 1月2日 女性 階段でつまづき 転落死 1月3日 男性 喧嘩で椅子で殴られ、脳挫傷を起こし、死。 1月4日 女性2名 男性2名 N廃病院に侵入。院内を探索後、遭遇。壁に頭を打ち付け、お互いの眼球を奪い合う形でえぐりだし。絶命。 1月5日 男性 痴情のもつれから知人の男性と口論になり。道路に突き飛ばされる。轢死。 1月7日 女性 ハイキング中に毒性を持つキノコを誤食。8時間後に病院にて死 1月9日 男性8名 女性3名 N駅西口にて、遭遇。互いの目を奪い合い。指を噛み千切る。失血死。 男性一名が生き残ったが、六時間後、病院から脱走し、N廃病院の手前で野犬が骨を咥えているのを発見。 1月10日 男性 登下校時に車に轢かれ、轢死。 1月11日 男性13名 女性22名 N高等学校の廊下にて、男子生徒7名が遭遇。数分後に教室にて突然男子生徒が窓を割り、破片で他生徒4名を攻撃。 同じ事を遭遇した生徒6名が数分後に他の教室で行ったため。甚大な被害が起きた。 1月15日 男性 夜道を歩いていたところ、遭遇。奇声を上げて走り去る。職員の捜索むなしく、発見されず。 (追記 2月4日。N廃病院のエアコンの中から折り畳まれて発見。) 1月18日 男性 N廃病院に潜入。 当記録を発見。それを書き写し、2日後にネットに小説という形で投稿。 その2時間後に火事がおき。焼死。 1月21日 女性 道路を通行中 突如野犬に襲われ、死亡 野犬は駆除済み (追記 女性はネット上で18日の男性の小説を閲覧していたことが発覚) 1月23日 男性 ネットで小説という形で投稿された当記録帳を閲覧。 2時間後に溺死。 1月24日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。2時間後に失血死。 1月28日 男性3名 N廃病院にて当記録を閲覧。遭遇。 壮絶死。 1月29日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。焼死。 1月30日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。餓死。 1月31日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。溺死。
世界はどうしようもなくノイズで溢れている。 廊下に4つ並べられたパイプ椅子に座り、ノックの回数は何回だっけと自問自答する。 グループディスカッションで一緒だった4人だったけど、1人と2人と1人になっていた。 先ほど2回ノックして部屋に入った1人を 「トイレかよ」 「落ちたわな」 と2人がクスクスしている。 なるほど3回か、と思う自分がイヤになる。 陰口は聞きたくない。自分が言われていることを想像するから。 自分の番だ。3回ノックするけれど、2回目強く叩きすぎたかなと、ちょっと後悔。 入室して、扉を閉める。クスクスを想像してしまって、またまた後悔。 うちが第一志望ですか? そんな質問の返答に数拍つっかえる。 面接官の困った顔でペンを動かす姿に、ああ今回もダメなんだなってわかってしまう。要らない経験値ばかり積んだ自分がやっぱりイヤになる。 「ご飯行こうよ」 さっきの2人が、声をかけてくるけれど、 次、あんまり時間ないんだ。 って返して4時間暇になる。 2時間カフェで粘ったけれど、まだ2時間。 公園で潰すあと2時間。マフラーで隠れてないその上の、特にピョンと飛び出た耳が寒い。 こういう時に耳っていうのは、風ばかりでなく、冷たいものを集めてくる。 『あの子空気読めないよね』 『仕事できねぇジジイがさー』 どれも自分に向けられてる気がして、気が滅入る。 寒いから気が滅入るんだ。精一杯の元気を振り絞り、ペラペラの防寒用イヤーマフを110円で買ってつけてみる。 音は全部通すけど、風は全部は通さない。 見上げると知ったような顔の1人と目が合う。 「何その耳当て、正直ダサいよ。そんなの見られたら内定とれないよ」 直接的な悪口に、いっそ気持ちが軽くなる。 あるいは、本当に心配してくれてるのかな、と可笑しくなる。 「そうかもね」 それだけ言って、そのまま立ち去る。スッと気持ちが浮いてくる。もう、冷たいものは集まらない。 寒いから気が滅入るんだ。 後ろで何か言っている。 世界はやっぱりどうしようもなくノイズで溢れているけれど 「高性能のヘッドフォンなんで世界の音も聞こえません」 了.
最近のパソコンは音声で文章が書けるらしい。 早速試してみたものの、なかなかどうして正確な文章を書いてくれた。 読点も自動的に打ってくれて、これはタイピングが難しい人間にとってもパソコンが使いやすくなると感じた。 しかし肝心の音声入力の開始にはキーボード操作が必要であり、全くキーボード操作ができない人にとってはそもそも始めることにハードルがありそうだと気づいた。 鍵かっこを書く時も、書いた文章を校正する時も、なかなか難しい。 使ってみなくては分からないこともあるものだ。 「ああ、疲れた」 仕事の手を止め、コンビニに向かう。 今まで気にも留めていなかった点字ブロックや車椅子のスペースがいやに目立ち、本当に役に立っているのだろうかと、ぼくの頭をふとよぎった。
オーロラが小さなブラックホールだということは、あまり知られていない。 大きさによって吸い込むものは変わる。ちょうど小瓶に入るくらいのオーロラは人間の感情を吸い込む性質を持っていた。 男はその管理局の職員だった。 小瓶に入ったオーロラは無数にあって中身が分からない。 男には娘がいた。妻を早くに失ったので、娘が唯一の家族だった。 男はオーロラを愛していた。入局当時から誰よりも働いていた。皆が嫌がる日曜日の宿直も進んで、引き受けた。妻を失っても一人娘を守る為に必死で働いた。 男が娘とふれあえる時間は、朝の僅かしかなかったが、最大限の愛情を注いだ。娘も男を愛していた。 ある時から、娘の顔がむくんでいることが増えた。眠る前に泣いていたのだと知ったのは、 「父さんは私なんてどうでもいいんだ」 と言う言葉が、娘の口をついた時だった。 娘はしばしば心無い言葉に晒されていた。母親もおらず、父親もほとんどいない。子供たちにとって十分なからかい材料だった。 それでも、オーロラの管理を放棄することはできなかった。 男は他に誰もいない日曜日にオーロラの入った瓶を持ち出した。帳簿を書き換えることは、恐ろしく簡単だった。男にとって最も美しく見える妻の感情が入った瓶だった。 かつて、妻は娘が産まれた頃に、この瓶を欲した。管理者には一度だけ感情を閉じ込める権利が与えられていたので、男は妻の願いを叶えた。男には子どもが産まれた歓びを閉じ込める意味が分からなかった。 男は瓶詰めを娘に渡した。 「このオーロラは空気に触れると周りの感情を吸い込んでしまう。決して逃すことはない。 逆に水に溶かすと感情が発露し、そしていずれ消えてしまう」 娘はオーロラにそんなことができるのかと訝んだが、瓶に入った極彩色にはそれを事実だと思わせる不思議な魔力があった。 「君が耐えられなく辛い時に、この瓶を開けなさい。辛さを感じることはなくなるから」 男は娘に優しく微笑んだ。 極彩色の御守りを手に入れた娘は、もう泣くことはなかった。規則よりも自分を優先してくれる愛情を感じたことで、何を言われても辛くなかったからだ。 娘はすっかり成長し、極彩色の御守りはついに一度も開けられることはなかった。男は娘の成長を見届けることができた歓びに満たされていた。 この気持ちに封をしたいとさえ思った。 男は今や不要になった極彩色の不正の証拠を処分するため、水に溶かした。 娘が産まれてから、いつも微笑んでいた妻を思い描きながら。 オーロラが溶け出した水は酷く冷たく、恐ろしいまでの青さを湛えていた。 了
「なんて哀れな娘なんだい。哀れすぎて見ちゃあいられないよ」 魔女が杖を振ると、シンデレラの姿が変わっていきました。 三日に一回の銭湯通いできしんだ髪の毛は、トゥルントゥルンのキューティクルに。 うっすらと漂っていた体臭は、フローラルの香りに。 古着で揃えた染み付きシャツとよれよれのスカートは、ファッション雑誌さながらのシャツとスカートに。 オーエスのサポートが終わった型落ちスマホは、最新機種に。 「さあ、これで準備は整った。マッチングアプリを始めて、デートに行きなさい。婚活パーティに申し込んで、出会いを探しなさい」 シンデレラは自分の姿を見て、その変わりように驚きました。 そして、部屋に散らばった財布や化粧品を見た後、魔女を睨みつけました。 「ここまで変えてくれるんなら、財布にもっと沢山お金を入れてください。化粧品も高級ラインの物に変えてください。こんなんじゃ全然足りません」 感謝の言葉の一つでももらえるかと思っていた魔女は、シンデレラの放った言葉に耳を疑い、そのまま家を出ていきました。 「あ、こら! 逃げるな! ちゃんと最後まで面倒見ろ!」 シンデレラは魔女を追いかけましたが、箒に乗って空を飛んだ魔女には追いつけません。 魔女はシンデレラの家を離れ、空から日本の街を眺めます。 多様性。 平等。 権利。 綺麗ごとを吐くだけで努力を惜しむ人々が、そこにはたくさんいました。 「これが、あの美しい国の末路か」 魔女はそのまま、どこへともなく飛び立っていきました。 跳んでいる間に落ちた水は、雨か涙か。
クルトンの船に乗って、僕は漂流していた。 クリーム色の空を、パセリの小鳥が鷹揚に翼を羽ばたかせている。 アサリの立派な船が口から蒸気を吹き出しながら、僕の船を靡かせる。 僕はふらつかないように、さくさくとした船べりにしがみついた。 空を、大きなスプーンの飛行船が飛んでいて、日が陰る。 海風が一段と強くなって、クラムチャウダーの海の波に掬われるようにして、僕の船はグングンと進んだ。 クルトンの船は、じわじわとスープを吸っている。 じゃがいも、玉ねぎ、ベーコン、にんじんなど、色とりどりの小島を縫うように抜けると、大きなしめじの島が目前に迫っていた。 大きな島に見惚れていると、ふと違和感を覚えた。 僕の船は、スープをかぶって冠水していた。 大きな海は、暖かかった。 僕の体は、ふやけてふわとろになったクルトンの船に沈み込み、そのままゆっくりと海の中に沈んでいく。 その海の暖かさに、僕の体も、クルトンと同じように溶けていく。 境目が薄れ、僕の体は、海と一つになった。 どこからか、トーストの焼けた匂いがした。
萌木色を観せて なんだか暖かく想う 包み込むような 飲み込むような 萌木色を手に乗せて 力加減がわからなくなる程の尊さ 耳に風走っていく心地良さ 視界に溶け込む存在感に、美しさを想う 萌木色 春の芽が咲く時 人恋しくなる時 抱き寄せて 包み合う (完)
自販機があった。ジュースが売られていた。何か買おうと思った。財布を取り出した。しかし、金がなかった。どうにかならないか。自販機をよく見ると、小さな穴があった。そしてその横にペンチが吊るされていた。『この自販機の商品は歯でも買えます。』そう書かれていた。俺はさっそくペンチで歯を引っこ抜き、穴に入れ、コーンスープのボタンを押した。がこん、と音がして、コーンスープが出てきた。俺はさっそくそれを飲み始めた。歯が一本なくなったので、噛めないコーンがあった。
冷蔵庫の扉には、掲示板のように過去の自分からの伝言が貼られている。どれも同じ形をした長方形の方眼紙に、同じような形の細い字が並んでいる。寝起きで視点の定まらない目を細めながら、今日の自分への紙を探していると一枚だけ見覚えのない紙があった。 罫線のひかれたノートの端を小さく手で折ってちぎったような紙に「チョコレートあるよ」と罫線を無視した歪んだ文字で書かれていた。その文字に見覚えはあった。しかし、誰の文字かは全く思い出せない。 その紙を貼ったまま、冷蔵庫を開けるとチルドケースの上の段に透明の袋でまとめられたチョコレートが目に入った。一粒一粒が赤や青、緑色の紙で包装されている。それは自分が学生時代に好きだったメーカーのチョコレートだ。冷蔵庫の冷気を浴びながら、口の中はなめらかなチョコレートの味を思い出す。 冷蔵庫を閉じ、玄関の鍵を見た。チェーンもかかっている。 もう一度、冷蔵庫に貼られた文字を見る。 差出人の分からないチョコレートを捨てる気にはなれなかった。
鼻水が止まらないし、クシャミも止まらない。頭がぼーっとするし、これは風邪かもしれない。 僕の隣では息子がイビキをかいている。 昨日、雪の降る中、買い物へ出かけた 傘もささずに歩いて近くのセカンドストリートへ 仮面ライダーのコーナーを見つけ 小さくしゃがみながら、しばらく探したあと 一つを手に取り僕の所に近づく 「これが欲しい」「これ買って」とかは言わない パパが「買わないよ」と言えばすぐ諦めるつもりなのだろう。 お店を出る頃は雪が大きくなっていて、少し小走りで帰った 僕の右手を握りしめる手は、いつの間にか大きくなっている。片手には五十円のオモチャを握りしめている。
そのタコ焼き屋の店主の親爺には、カミさんの他に、愛人がいた。正確には、それは愛人ではなく、愛タコだった。何匹も愛タコがいた。この親爺はタコたらしだった。とにかくタコにモテた。水族館に、海鮮料理屋の生け簀に、そしてもちろんあらゆる海に、愛タコがいた。そしてこの親爺の恐ろしいのは、そうして囲った愛タコたちを、次々と殺して、店のタコ焼きの具にしてしまうことだ。殺タコはあらゆる場所で行われた。ある愛タコは、親爺に三本目の脚を愛撫されながら、包丁で刺し殺された。ある愛タコは、ドライブで訪れた明け方の海で、絞め殺された。ある愛タコは、耳元で愛の言葉をささやかれながら、沸騰している熱湯にぶち込まれた。そうして死んだ親爺の愛タコたちは、切り刻まれ、タコ焼きの具に姿を変えていった。親爺はそのことに快感を感じていた。異常者だったのだ。親爺のカミさんは、愛タコの存在を知らなかった。ただの平凡な、多少仕事熱心なタコ焼き屋の店主だと思っていた。しかし、そんなカミさんも、夫に関して、一点だけ、不審な点があることに気づいていた。この親爺は、いつもポケットに一枚の写真を忍ばせていた。そして時々それを取り出して眺め、ため息をついているのだった。カミさんが以前、そっと写真を覗き見ると、そこには、一匹のイカが写っていた。
落とし穴は、地面に落ちる。 落とし壁は、壁に落ちる。 「あれ?」 ドアを開けようと手を伸ばした少年は、そのまますり抜け、ドアの先に落ちてしまいました。 ドアを開けば自分の部屋があるはずなのに、すり抜けた先は牢屋のような暗くて冷たい場所でした。 「ここはどこ? 誰かいないの?」 少年は壁に向かって呼びかけましたが、返事が返ってくることはありません。 部屋の中に少年の声が反響するだけです。 少年は壁にもたれて、体育座りをしました。 誰かが外で扉を開けてくれれば、出られるんじゃないかと期待して。 しかし、いつまで待っても誰も来ません。 四方は壁に囲まれたままで、出口が作られる気配がありません。 「このままここで死んじゃうんだろうか」 少年は、寒さと暗さで弱気になりました。 自分は何か悪いことをしたんだろうかと、昔のことを思い出しました。 「弟は、こんな気持ちだったんだろうか」 少年はむかしむかし、弟を落とし穴に落としたことを思い出しました。 穴の中で泣き叫ぶ弟を、少年は指をさして笑いました。 その後、母親から拳骨をくらったので、少年は一層弟が嫌いになりました。 「弟をいじめた罰が当たったんだ」 少年は涙を零しながら、頭を床にこすりつけました。 「ごめんなさい! 意地悪してごめんなさい! 明日から、いいお兄ちゃんになります!」 少年は、何度も何度も謝りました。 百回を超えたあたりで、突然壁に穴が開いて、光が差し込んでいました。 光が部屋中を照らすと、殺風景だった部屋がいつのまにか、少年の部屋になりました。 入り口のドアの前には、宿題を抱えた弟が立っています。 「兄ちゃ。宿題教えて?」 少年は目を何度もこすり、頬っぺたをつねった後、弟に抱き着きました。 「ごめん! 俺、いいお兄ちゃんになるから!」 弟には、少年の行動が理解できませんでした。 自分は、何故抱きしめられているのだろうかと。 しかし、悪い気はしませんでした。 「兄ちゃ、宿題教えて」 「教える! なんでも教える!」 数日後、少年は考えます。 あれはいったい、どこだったのかと。 今でもドアを開ける時、またあそこに落ちてしまうんじゃないかと考えてはいましたが、少年が落ちることは二度とありませんでした。 少年が弟を大切にする限り、落とし穴に落としたりしない限り、少年が落ちることはありませんでした。
「ありがとう。ええっと、磯部くん?」 「福田です」 また、名前を間違えた。 でも仕方ない。 人の区別なんてつかないんだから。 「不和、ちょっといいか」 「なんでしょう、風見鶏先生」 「……阿久津な。不和、お前は成績もいいし学級委員としてしっかりやってくれているとも思う。でも、もう少し周りに興味を持ってもいいと、先生思うな」 私はたびたび、人の区別がつかないことを、治した方が良いと指摘される。 でも、私からすれば区別なんてつかないほうが普通なのだ。 「先生、日本人は黒髪だらけなのに、日本の漫画に出てくるキャラクターの髪色が、何故カラフルなんだと思いますか?」 「なんだ、その質問。そっちのほうが可愛いからじゃないか?」 「それもあるかもしれませんが、私は人間が、本質的に顔の区別がつかないからだと思っています」 「区別が?」 「皆が黒髪なら、キャラの見分けなんてできない。だから髪色を変えて、無理やり見分けさせている」 「そうか? そうなのか?」 先生が考え込んだので、私は会釈をしてその場を立ち去った。 先生が私の想像を信じようが信じまいが、どちらでもいいからだ。 人間は何も変わらない。 皆目が二つあって、手足が二本ずつある。 いっそ違う柄の羽根でも生えててくれればと、何度思っただろうか。 いや、私が気に食わないのはそこじゃない。 皆、私と一緒のはずなのだ。 たまたま仲の良い人間の顔を覚えているだけで、その他大勢の顔を覚えていないのを無視しているにすぎない。 だから、仲の良い人間がいない私を、顔を覚えていない無関心野郎だと非難してくるのだ。 皆同じことを考えるから、私はますます他人の区別がつかなくなっていく。
外がいつもより明るいのは雪の証拠。窓を開けるのが不安なのは成長の証。窓枠の硬質な冷たさに思わずカーテンの暖色に助けを求める。まだ足跡のない雪の上に、と、はやる気持ち。すべっちゃわないか少しのびくびく。ブレーキをかける心には、ちょっと不満を。
窓の外を見ながら、 「ねえ、何にするの?」 言ってはみたけれど、言葉の先に友人の姿はなかった。 「んー。ああ、あそこに書いてあるカフェ・コレットって、あれ、なんだろうねえ」 「あ、ごめんなさい。さっきまで友人が」 「うん、そのようだね」 「あ、ちなみに、エスプレッソにお酒が少し入ってるものです」 見ず知らずの男性とこんなにスマートに話をしてるなんて、自分でも驚いている。 「お酒?」 「ええ、グラッパとか、ブランデーのこともあるみたいですけど」 「ああ、カフェ・コレット?」 「ええ、カフェ・コレット」 「うん、知ってる」 「え」 私の驚きを見た男性の、にやりとした顔が、でも、少しも嫌味がなく、好感がもてるとさえ言ってもいい。 「カフェ・コレット。イタリアでは、昼間から飲まれたりするよねえ」 「ああ、ええ。そう… みたいですね」 「そう、みたい?」 「ええ。そうみたいです」 男性が窓の外を見て、つられて私も見た。視線を戻したとき、男性はすでに私を見ていた。 「行ったことないかな、イタリア」 「あ、ええ、まだ」 「そう。じゃあ、いつにしようか?」 「え?」 「イタリア」 「ごっめーん、電話してたー」 友人が帰ってきて、男性との会話はそこまでになった。 あと少しでイタリアに行く約束をしていたところだったのに。 遠く私の視線の先に、男性の背中が、やけに眩しい。
昨日とはちがう寒さに 起き上がる力に躊躇いが強い 窓の外の白さに頭は目をつぶり それでいて心がざわつく カーテンをそっと 指先でなでるように すこしだけすべらせる 庭の枯れた草木の上 覆い隠すように広がる白しろシロ よろこんでいいのやら 心配したほうがいいのやら もう子どもではないのだなあ わたしがちいさかったころ 親がそうだったように 雪が降ったことを 素直によろこべない 素直によろこべないのは 感情の数がそれだけ増えたからか それとも ひとまず あたたかいミルクティをいれる あとのことは そのときの自分が決めること 狼狽えることがないのを けれど素直によろこべない
俺はホームレスだった。テントを持っていたので今晩テントを張る場所を探して歩いていた。初めての町、右も左もわからない。人気のない山の方へ、勘を頼りに進んだ。辺りはもう暗かった。けっこう田舎の方で、少し広い道路を外れればすぐに街灯なんて無くなる。ある住宅街の中を、川に沿ってずんずん進むと、気づいたら高速道路の側道をあるいていた。真っ暗な高架下をくぐり、暗い所を歩き慣れてる俺でさえ、チラチラ後ろを気にしながら歩く程、気持ちの悪い雰囲気が漂っていた。冬だったので虫も鳴かず、静寂の中、高速道路を走る車の音だけが鳴り響いては止み、鳴り響いては止みを繰り返す。「なんか変なとこ来ちゃったな、、、」なんて呟きながらもとりあえず進んだ。すると先の遠くの方でなにか白い光が見えて一瞬立ち止まった。光は動かない。きっと高速道路の街灯かなんかが何かに反射してるんだろうと判断してまた歩を進めた。その通りだった。俺は墓場に出たんだ。白い光は墓石に街灯が反射したものだった。「この墓場、なんだか気持ち悪いな、、」なんて思って通り過ぎようとした時だ。ある墓の前で俺は背中にゾワゾワっと冷や汗をかいた。その墓は誰かがよくお参りに来るのだろう、花も供え物も新しかった。なぜ冷や汗をかいたのかというと、見えはしないのだが、その墓の前に誰かが立っているような気配を感じたからだ。もちろん誰も立ってはいないのだが、俺の頭にはそこに人の形が浮かんでいた。俺に霊感なんてものはないと思う。でもね、いくら想像だとしても、顔まで浮かんでくることってあるだろうか。ハッキリはしないのだが、爺さんの顔だった。俺は持っているライトで墓石を照らした。別に読んではいないが、深く刻まれた誰かの名前がそこにあった。「まあ、俺もいつか死ぬからな、別に怖がることじゃないわ。幽霊がいるとしたら、俺だっていつかは幽霊になるんだから」、なんてことをあえて気丈に声に出して言った。これは俺が怖い時によくやる癖である。その時だった。大した迫力もなくて悪いが、その時の俺にとってはめちゃくちゃ怖いことが起きたんだ。俺は確かに見た。墓に供えてある立派な花な、ぴら、、、って、花びら一枚落ちたんだよ。俺が固まって、頭を整理しようと躍起になっているとまた一枚、ぴら、、、って、落ちたんだ。あ、これおるわ、、って確信した瞬間だった。こういう時、俺は叫んだり、走ったりするのは苦手だ。早歩きもダメ。本当はめちゃくちゃ怖いんだけど、さも平気なフリしてゆっくり歩き去る癖がある。その時もそうした。クルッと墓石に背を向けて、ゆっくり墓場を抜けた。頭の中にはさっきの爺さんの顔形がまだ浮かんでいる。そして、なんとなくだけど、背中についてきている気がした。早く灯りがあるところにでたいな、、なんて思っていると少しずつ足早になっていった。ようやく見つけた街灯の灯りのしたに、避難するかのように入りこんだ。その時にはもう、何かがついてきている感じも無かったのだが、その場所からさっきの墓場がまだ遠目に見えて、少し余裕もできたのでちらっとその墓場に目をやった。遠いし暗いしもちろん確実とは言えないが、俺は見た、さっき俺が立ってた墓石の前に、けっこう小柄な何かが立っているのを。しかもな、それ動いたんだよ。多分最初はこっちに背を向けてて、それからちらっとこっちを振り返るような動作に見えた。それを見た瞬間、俺はまた歩き出した。結局その日はテント泊はせず、街中まで出てネカフェに泊まったんだよね。小説とは言えないかもだが、これ実話です。
流れ星が通ったとき、青年はそれに向かって大きく手を振った。流れ星が消えた空に目をやったまま、振った手をゆっくりと下ろし、冷たい金属管を握る。 青年はジャングルジムの上に腰掛け、夜の空を旅していた。 「流れ星は天界の門が開いた時に漏れる光なんだって」 友人から聞いた話を忘れてはいなかった。 同時刻。隣の町の男は点滅する赤い信号機の下で、流れ星に祈っていた。 「安らかな眠りと、良い夢を」 流れ星が消えた後も頭の中で繰り返すその言葉は、誰にも聞かれず、ただただ男の頭の中を流れていった。
選挙間際世の中が荒れる私は淡々と理不尽な 事だけ動く世界で誰かを癒し宣伝したり全部 無償で行う日々否宣伝したよねお礼は無いの ステッカーも良いけど地獄の沙汰も金次第で 一応エネルギーと言霊で客寄せパンダ状態な 訳だし利益は分配するのが当然でしょう旨い 汁は吸い義理人忘れちゃ駄目に決まってるし 身勝手な人間は自分冴え幸せならば人はどう 為ろうが御構い無しの愚かで悲しい生物私は 其れが現代の人間の思考だと危惧する万が一 大地震や何らかの攻撃受けたら多分真っ先に 死ぬのは義理人を知らない者達だろう誰かを 思い遣り助ける行為こそ緊急時誰かと一緒に 行動する事は単独行動依り救助される確率も 高く1人じゃ見えない後ろ危険冴えも一つの 目依り二つの目的に合力も発揮そうで助けを 呼ぶ時は1人はその場に待機もう1人は声や 行動で救助を知らせ人を連れて来る事冴えも 可能な訳だけど普段から義理人が無く自分の 事しか愛せず他人を利用して粗末に扱う者は 普段の行いが祟り緊急時冴え誰も救助へ来ず 寂しく1人野垂れ死んで行く自業自得と言う 素敵な言霊かも知れない皆死ぬ事は怖いので 緊急時助かる為普通から他人に親切義理人を 忘れ無い正しき行いはこれからの日本で唯一 生き残る羅針盤かも知れない
視覚がかれを捉えることはない。かれが視覚を捉え給うのであり、かれは霊妙なお方、通暁されるお方なのだ。(コーラン家畜章103節) 神は物理的・感覚的に捉えられる存在ではない。 人間の体性能を超えたものに対する畏怖は忘れてはならないのかもしれない。
密かに作家になりたかった 漫画家から始まり、小説家、画家、そして作家という流れだ これらは全て、現実逃避の産物で自然な成り行きだった でも、作家だけでは生活は難しい 安定源が必要だ だから、したくも無い仕事をしようとしている 情けない話だ 残りの人生を投げ打ってでも、創作しようとは思えなかった 少ない睡眠時間を削って表現する事が、今できる精一杯の事だった 合理的に生きようとすると、自分の理想からかけ離れて行ってしまう それでも、夢が目標となった今、こうして文章を組み立てている (完)
何らかの障害を持っていても、症状が目に見える形で無いと認めてもらえない グレーゾーンの人間はあまり理解されない やる気が無いだの、甘えているだの、症状として見てもらえない 多様性の社会と謳うのなら、移民よりも先に『グレーゾーン』に目を向けるべきだと思う (完)
少な目でお願いしまーす♪ あれは見えているな。 でも多分やりたいのは呪いでも相撲でもなく大奥だろう。 あとあれは少年漫画だ。 天使禁猟。 ヒロインになりたいのかな? お願いならトレードだろう。 宿儺、ガブリエル。 僕んち六畳、向こう天守閣。 誰の願いだろう? ああ、あとプログラムでゼネコンでビルはいっぱい建ってたからお城はいっぱいある。 そう思った瞬間六畳を奪いに来るのかな? ガラガラの大奥。 女達の園。 女の子たちはこんな世界はつまらないと一人で遊ぶ♪ 「何をしたらいいですか?」
「やりたくないことはやりたくないってちゃんと言おうな、大人なんだから。」 「勝手を言うな、誰のおかげで生活できてると思ってる。」 「みんながそうしてきたからやってきただけなのが見え透いてるからやりたくねーんだよ。」 「郷に入っては郷に従えというだろう。子供は君じゃないのか?」 「じゃあ大人なあんたに聞くけど今現在それをやってうまくいってるか?自分に嘘偽りなくそう言えるか?」 「文句だけなら誰でも言えるんだよ。文句を言える立場になってから変えような?」 「文句じゃねーよ。無駄なことはやりたくねーって意見だよ。」 「じゃあやめればいい。変わりはいくらでもいる。」 「そこについては文句がある。それこそまた同じことの繰り返しじゃねーか。人を使い捨ての駒としか思ってねーな。それがいい大人のすることか?」 「文句を言える立場になってから略・・・
深夜の雨上がりのアスファルトに、赤信号の視線がにじむ。青がその座を乗っ取るとき、世界の景色が一変する。歪んだ支配から、あらゆる空間と自由が解放される。路面が、ただの濡れた路面でいられたのは、たった一瞬。ふたたび、制約が課され、そして、また…
ちらりちらりと雪が降っている。 私はテンションがあがった勢いで、外に出た。 髪に雪が引っ付くと、オシャレな宝石みたいでお姫様になった気がした。 機嫌よく歩いていると、向かいから女の子が歩いてきた。 女の子は傘をさしている。 (なんで、雪の日に傘をさしてるんだろう。雨でもないのに) すれ違う瞬間、不思議そうにする女の子と目が合った。 ちらりちらりと雪が降っている。 私はテンションがさがり、さっさと家に帰ろうと歩みを速めた。 傘に雪が乗っかると、少しだけ傘が重くなってげんなりした。 機嫌悪く歩いていると、向かいから女の子が歩いてきた。 女の子は傘をさしていない。 (なんで、雪の日に傘をささないんだろう。髪べちゃべちゃになるのに) すれ違う瞬間、不思議そうにする女の子と目が合った。
「お〜い、お〜〜〜い」 高校から帰る途中だったりんは、遠くから呼びかけられて振り返った。声の主は、サラリーマンらしき若い男性だった。さっき通り過ぎた曲がり角の前に立っている。しかし、その人の顔がおかしい。 (あれは……ピエロ?) あたりが暗くてよく見えないが、彼の顔は不自然なほど真っ白で、鼻や口が赤くて大きかった。スーツとは全く似つかわしくないそれは、どう見てもピエロのメイクに違いなかった。 なんでそんなメイクしてるんだろう……とじーっと見ていると、次の瞬間、ピエロは手を振りながら、こっちへ向かって走り出してきた。軽く駆け寄るなんてものではない、本気の猛ダッシュだ。りんは思わず悲鳴を上げて逃げ出した。 「だ、誰っ⁉︎ 助けて‼︎」 りんは必死に叫んだが、誰もいない静かな通りにこだまするばかりだ。りんは不運を呪いながら、足にさらに力を入れて走った。しかし、ピエロは凄まじい速さで追ってきていた。唇が耳まで裂けたその恐ろしい顔は、もうりんのすぐ後ろにあった。 「つ、か、ま、え、たぁ」 「ぎゃっ‼︎」 大きな手で突き飛ばされ、りんは転んで地面に倒れ込んだ。意識がふっと遠くなった。 🤡 「ねぇ聞いた? りんちゃん行方不明になっちゃったんだって!」 「えっ……?」 「一昨日の下校中にいなくなっちゃったらしいよ。誘拐かなぁ。怖いよね〜」 「……私、昨日りんちゃんに会ったよ」 「うそ! どこで?」 「帰りに駅に行く途中で。でも、なんかすごい様子が変で……」 「どんな?」 「顔にね、ピエロのメイクをしてたの。それで、手を振りながらこっちにすごい勢いで走ってきて……」 「え、なにそれ……? それで、その後は?」 「私、怖くなって逃げちゃって……。そうしない方が良かったかな……」 「いやいや、しょうがないよ。っていうかそのピエロ、りんちゃんに姿が似てるだけの不審者だったんじゃない?」 「そうかなぁ。すっごい似てたんだけど……」
夢の中で 卒業式のレンシュウ。 枕の隣で 私と一緒に突っ伏した古典の参考書 私は涙目で起きたのに ソイツはツップシタまま まだ 土曜日のお昼寝 卒業式のレンシュウは 起立が合わずにやり直し 返事の声が小さすぎてやり直し 私より前の男子が 腕立て伏せのペナルティ 私より前の女子が 熱中症で倒れて保健室 私の番 私の番 私の番…… 夢の中ですら卒業式が終わらないのに 試験の日だけが近づいてくる もう。 ヤダ。
( ˙꒳˙)s₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾g◝(⑅•ᴗ•⑅)a٩(๑❛ᴗ❛๑)p(o゚ロ゚)ow……………ヽ(`Д´)(`Д´)ノ ヾ(˙❥˙)ノ その後は 怪人が巨大かしたり 博士が作ってくれたロボットが上手く変形しなかったり 怪人が急に泣き出したり と、なんだかんだあったが どうにか怪人をやっつけることができた 俺たち五人は戦いを終え打ち上げもそこそこに、それぞれの【仮の生活】に戻っていった 「こんにちは。本日カットを担当するパールです。よろしくお願いします。本日はどのようにしましょうか」 ここはパールが働く美容院。パールはお客さんの髪に慣れた手つきでハサミを入れる。チョキチョキと髪を切る音が心地よく店内に響く。 カットを終え、シャンプー台ヘお客さんを案内する。席を立ったお客さんが床を見て驚愕する。 「パールさん…これ…私の切った髪でなんか書いてあるんですけど…」 「あっ、これですか?こう書いてあるんですよ」 「怪人!ヒキコモリー&ヒキコモーラセの乱!!終わり!!!」
ヽ(`Д´)(`Д´)ノ=3 (˙❥˙)ノ 「お前、黙る!うるさい」 「うるさいはお前!ダメなヤツ!頭悪い!」 「お前、ムカつく!喋るな!」 怪人ヒキコモリーとヒキコモーラセは人を飲み込む度に成長していく。 ブラックホール団は怪人に引きこもりの家族を次々に飲み込ませ、休ませることをしない。 「……………」 「なんか言ったらどうなんだ?黙っていたら分からないだろう?」 「おれだって自分の気持ちなんか分かんねぇよ!」 「お、お前が分かんなきゃ、誰も分かんねえぞ!」 怪人の二つの頭は分かり合えず黒い思いは膨れ上がる 「はい!そこまで!あんた達!とっとと次の家に行くわよ!っもう、おんなじ身体で仲良くしなさいよ!」 サーナルシスはコールセンターの仕事を抜け出して怪人と街を歩いていた 人々は悲鳴を上げて逃げ惑っている 「あらあら、人間達が虫の様に逃げていくわよぉ。あんた達!そこの人間達も飲み込んじゃいなさい!」 「…うん」 怪人黒い霧になり逃げ惑う人々に覆いかぶさる 黒い霧の中に人々は沈んでいく 「助けてくれー!ぎゃー!」 そこに、騒ぎを聞き駆けつけたホワイトレンジャーが到着した! 「見つけたぞ!ブラックホール団!」 「やっぱりあなた達の仕業だったのね!」 サーナルシスがホワイトレンジャーの前に出てくる 「あらあらあら。はじめまして噂のホワイトレンジャー。あんた達ね私達の邪魔をしているお邪魔虫ってのは」 「お、お前は!」 「IKKOさん?」 「やだもう!どんだけぇ〜!背負投げ〜!」 「田中邦衛さん?」 「まだ…まだ…まだ子供達が食ってる途中でしょうぐぁ!」 「ラッキー池田さん」 「そうです!私がラッキー池田です!って、ラッキー池田どうやんのよ!やったことないわよ」 「改めて、私の名前はサーナルシス。どうぞお見知りおきを」 サーナルシスは怪人に向かって言う 「お前たち、出番だよ。私は帰ってシャワーでも浴びるわ。」 「ちょっと待てよ!」 「キムタク?」 「戦う前にひと言言わせてもらいたい」ホワイト 「誰でも辛い時は自分の殻に閉じこもるものです」スノー 「引きこもりは、誰にでもあることですわ」アイボリー 「今まで頑張ってきた自分を認めてあげるのよ」パール 「そしてもう頑張らなくていいのじゃよ」月白 「よし!今言ったことはいったん忘れて、突撃だ!」ホワイト
=͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ ( ˙꒳˙)s₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾g◝(⑅•ᴗ•⑅)a٩(๑❛ᴗ❛๑)p(o゚ロ゚)ow 「もしもし、こちら引きこもり相談センターです。はい、はい…」 ブラックホール団の秘密基地は、電話が鳴りやまなかった。 怪人ヒキコモリーとヒキコモラーセを更に強靭にする為、黒い思いが必要なのだ。その黒いエネルギーを集めるため引きこもり相談窓口を設けたのだ。 電話で聞いた住所を元に一軒一軒引きこもりの家を訪ねていって引きこもりの家族を飲み込んでいく。地道な作業だ。 だいたい一日五万歩は歩く。夜寝るときには足が棒になっている。本当は車を使いたいところだが、車は盗めるが、免許がない。 ※ちなみに飲み込んだ人間達は異次元空間でのんびりしているだけなので安心するんだ ピロロロロロロロ 「も〜団長!電話が鳴り止まないわよ!ちょっと手伝って下さらない!?」 「分かった分かった、手伝うよ」 「団長!三番!電話!」 「え、はい、あ、もしもし、えー引きこもり相談センターでございます。はいはい、それはそれは…」 ヽ(`Д´)(`Д´)ノ=3 「以上午後のニュースでした」 ここはホワイトレンジャーの寮 「最近一家全員行方不明になる事件が多いわね」 「これはブラックホール団の仕業に違いない。しかしどうしたらよいものかのぉ」 「どの家も家族に引きこもりの人間がいたらしい」 「そう言えば、この間うちの本屋で引きこもりの本を買う女性がいましたよ。悩んでいるけど相談出来ずにいるご家庭は結構多いのかもしれないですね」 「それにしても、もしブラックホール団が引きこもりのご家庭を誘拐しているとしたら、それは引きこもりの人が必要だからですよね?どうしてだろう?」 「それだ!アイボリー!奴らは引きこもりの人が必要なんだよ!だから引きこもりの家が分かれば未然に防げるかもしれない!よし!博士に言って引きこもりのエネルギーを調べてもらおう」 ベルト型トランシーバーにホワイトは話しかける 「もしもし、博士?今、引きこもりのエネルギーを…」 「大丈夫。話は全て聞かせてもらった。もうすぐそっちに引きこもりセンサーが届くはずだよ。Amazonだからすぐ届くよ」 それからホワイトレンジャー達は出動準備を終え、各々過ごしていた。 前回までの戦いの記録をする月白。 家の掃除をするスノー。特にトイレは入念に行う。 筋トレをしながらにゃんこ大戦争をするリーダーのホワイト。 サウナにはいるパール。 インスタライブをするアイボリー。 ピンポーンAmazonから品物が届いた。博士からの贈り物はスマホ型のセンサーで引きこもりのエネルギーがある所をマップで示してくれる代物だ とりあえずホワイトレンジャーは一番近い引きこもりエネルギーの家に向かった。
第一話〚知りたい。〛一部 僕は教師であるにもかかわらず、生徒の面瀬結凪(おもせゆいな)に想いを寄せている。堂々とこんなこと言う教師、他にいないだろう。面瀬は僕を何とも思ってないらしい、でも別に構わない。今の関係で何かあっては困る。厳しい社会の中、のほほんと恋愛してる場合じゃない。けど、何も起こらないという現実にもそろそろ限界になってきた。 2月14日今日はバレンタイン。チョコが42個置いてある机を見て、先生達がざわざわし始めた。まあ…教師がこんなに貰うなんて聞いたことないからな。そう思ってるとチャイムがなって授業に向かった。クラスメイト達が矢鱈と質問してくる。それはチョコレートの数についてだが別に自慢したいわけじゃないから言わなかった。 授業を始めようとすると、いつも通りある生徒に目がいった。面瀬結凪、クラスメイトから人気で頼りがいがあり、素直で明るい生徒だ。一見どこにでもいそうな感じがするが、惹かれたのはそこじゃない。惹かれたところは…もっと… 僕を改めて生徒に惹かれた理由を思い出すうちに自分って変なのかもと感じた。 家に帰ると携帯が鳴った。一通のラインがきた。どうやらまた会いたいらしい。もう関係は切ったはずだが…今は会いたくないから既読無視にした。 《ピンポーン》 誰だ?宅配ではないと思うが、出る気もない。 最近はなんだか疲れて、いよいよ学校以外に外に出る機会もなくなってしまった。友人の家はここから結構離れているし、じゃあ一体誰だ? 《ピンポーン》 流石に出た方が良さそうだ…ドアを恐る恐る開けるとそこには…え? 何で面瀬がいるんだ?どういう状況だ、?どうやってここに来たんだ?というか何で俺の家を知っているんだ?
あたたかい紅茶の入ったカップを両手で包む。手のひらに移ったわずかな体温以上のぬくもりに、あの人がこじらせた風邪を思い出す。 汗の浮いた額、重くかすれた息づかい… この世の終わりのような、ふたりっきりの世界のような。 そんな、今は昔のものがたり―
彼はびっくり仰天して、彼女がマンションの廊下で待っているのを見た。最初に会ったときと同じように、空色の着物を着て黒髪をお団子にまとめている。雪片が一つ一つ静かに漂うなか夕日を見つめる彼女は悲しそうに見えた。 早春に別れて以来、彼は彼女に会っていなかった。そして今、彼女は彼の前に立っている。彼が近づいて声をかけると、彼女は振り向いて微笑んだ。以前と変わらない左頬のえくぼが強調された優しい笑顔。 「どこに行ってたの。あちこち探したよ。」彼は懸命に涙を抑えながら言った。 「行ぐ前にさいならって言わねで、ごめんな。」彼女の東北なまりが柔らかな声に響き渡った。 「なぜ僕を残していったの。」 「俺だみんな、それぞれの事情があるべった。」 「でも…」 「それだども、俺たちはいつまでも一緒にいることを約束したんべ。だから、あんたさ会いに来たべ。」彼女は腕を広げて一歩前に出て、抱きしめるしぐさをした。 「えっと~、ごめん。僕は先に進んだよ。」 「どんた意味?」彼女の声は緊張し、眉をしかめた。 「今結婚している。」彼の声は弱くなった。 「何、もう結婚したんだか?」彼女は滑るように近づき、彼に冷たい視線を向けた。 「気分を害したら申し訳ない。」 「あんた、約束したべ。」 「でも…」彼は説明しようとした。 「約束したなだべ。」彼女の声は甲高くなった。強くて冷たい風が彼女のお団子をほどき、長い黒髪がうねる。彼女は目を見開き、殺意を込めて彼を見つめた。腕を伸ばして彼に駆け寄る。彼は後退したが、凍った床で滑った。彼女は彼を飛び越えると、大きなつららに化けた。つららは彼の浮気心に突き刺さった。溶けて消えて、胸にぽっかり穴が開いた。
刑務所の自由時間、庭の隅でぼんやり空を眺めていた一人の囚人が、ふいに「あっ」と言った。その視線の先には、一匹のチョウがいた。チョウはひらひらと空を飛んでいた。他の囚人たちもチョウに気づいた。みんなでチョウを見つめ始めた。ひらひらと飛んでいたチョウはやがて、刑務所の塀を超えていきそうになった。それぞれの囚人がそれぞれの思いでそれを見つめていた。しかし、塀の上部に張り巡らされた鉄条網の間で、チョウは動きを止め、もがき始めた。その鉄条網の間に、クモが巣を張っていたのだ。囚人たちは視線をそらした。そして苦笑いを交わしながら、それぞれの時間に戻った。穏やかな午後は、いつまでも続くようだった。
=͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ ( ˙꒳˙)s◝(⑅•ᴗ•⑅)a٩(๑❛ᴗ❛๑)p(o゚ロ゚)ow 窓の外の雲を見ている。 ゆっくりと青い空を流れる雲。少しずつ形を変えて白い雲は流れていく。 たかしはベッドに横になりながら空を見ていた。 なぜ自分は普通じゃ無いのか。 なぜ皆が当たり前にしていることが出来ないのか。 高校生になったら、何となく友達が出来て、彼女が出来て、部活も頑張って、部活終わりに皆でゲームながら帰って。そんな毎日が送れるもんだと思っていた。今の自分が惨めで不思議で不快だ。 なぜ学校に行けないのか。誰からもいじめられていないし、嫌なことも大してないのに… 父さんのことは関係ない。絶対に関係ない。でもいてくれたらとは思うけど。 「ガチャン」 母さんが家を出ていった音がした。とりあえずトイレに部屋を出る。 たかしはトイレに入っているときも頭の中はおしゃべりな自分がいる。 朝、起きたときは不安が体を充満していて怯えてしまう。何に怯えているかは分からない。多分、生きることに怯えてしまうのか。 トイレの水を流す 怯えているのに、食欲はあるし、よく寝れる。余計に自分が怠けているのだと責めてしまう。 誰もいない家でキッチンに入り自分の茶碗を洗う。その後はソファーに座りYouTubeを観ながらお菓子を食べる。すると直ぐに昼になる。家にいると時間があっという間に過ぎ去っていく。学校に行っていたときは昼休みが待ち遠しかったのに。 昼ごはんはインスタントラーメンを作る。自分の昼メシくらい作らないと、母さんに、社会に、申し訳なさで死んでしまいそうになる。一瞬で食べ終わってしまうけど。 昼過ぎは、洗濯物を取り込んで畳む、夕方前には雨戸を閉じてしまう。少しでも自分は役に立っていると思わないと辛い。 まだ、母さんが帰ってくるには早い時間、エロサイトを観て素早く処理を済ました。外では下校中の子供達の騒ぎ声が聞こえる。楽しそうに。 使用済みのティッシュを持って部屋に戻る。雨戸の閉まった部屋は真っ暗だ。闇しか無い。壁に手を滑らせ照明のスイッチを押すと、部屋には頭が二つある怪物がいて僕に襲いかかる 「わぁー!助けてー!かあさーん!」 たかしを飲み込んだ影は一回り大きく成長する 「かあさん」 「たすけて」 「こわい」 「くるしい」
=͟͟͞͞ =͟͟͞͞ =͟͟͞͞ ( ˙꒳˙)s٩(๑❛ᴗ❛๑)p(o゚ロ゚)ow 時間を少し前にさかのぼる。 ブラックホール団の秘密基地では、新たな怪人が育っていた。黒いマシンの中に【社会の黒い思い】がぐるぐると集まっている。 マシンの前には二人の男が立っている。一人はゴリラのようにデカくゴツゴツした男、もう一人は白い顔に赤い大きな口のスラリとした男 「そろそろ生まれそうですねぇ~クロノス団長。今回は引きこもりのエネルギーが集まっているようねぇ」 「いいかサーナルシス!この怪人を利用して次こそはこの世界を我らのものにするのだ!」 「そんなこと私に言われてもねぇ〜怪人ちゃん次第なんじゃないの?」 クロノス団長がサーナルシスを睨む。サーナルシスの方は「睨まれても困りますけど」となれたようすだ。 「チーン」 ベルの音とともに黒いマシンが開く。中から出てきたのは頭を二つ持ったの怪人だ。 「あら、面白いじゃない。一つの体に二つの頭。オルトロスのようでカッコイイわね!」 「あなた達の名前は…そうねぇ…引きこもりの怪人だから『ヒキコモリーとヒキコモラーセ』ね。左のあなたがヒキコモリーよ。……いやいや私から見て左のあなたよア・ナ・タ!」 「ふん。名前などどうでもいい。さぁ行くのだ!この世界を黒い思いに満たし、我らの物にするのだ!」 「はいはい、どうでもいいですね。怪人ちゃん、いってらっしゃ〜い!」